2013 Fiscal Year Research-status Report
iPS細胞由来移植細胞に混入する不死化細胞検出法の開発
Project/Area Number |
25871244
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | Foundation for Biomedical Research and Innovation |
Principal Investigator |
黒田 拓也 公益財団法人先端医療振興財団, その他部局等, 研究員 (70648857)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | iPS細胞 / 網膜色素上皮細胞 / 不死化細胞 / 造腫瘍性細胞 |
Research Abstract |
本研究は、iPS細胞由来移植細胞の安全性を評価する新たな試験法の一つとして、 移植細胞に混入した不死化細胞の高感度検出法を開発することを目的としている。未分化状態のiPS細胞は元来の性質として、造腫瘍性を持つため、移植細胞中に混入した未分化細胞に起因した腫瘍発生のリスクが存在する。これまでの研究で、我々は、LIN28遺伝子をマーカーとしてqRT-PCRでLIN28のmRNAを検出することにより、iPS細胞由来網膜色素上皮(RPE)細胞に混入する未分化iPS細胞を0.002%(5万細胞中1個)の感度で検出する試験法を開発した。この試験法は、未分化iPS細胞の検出法としては、従来行われていた免疫不全マウスを用いた造腫瘍性試験よりも高感度であり、迅速、簡便、安価であるメリットがあった。 近年、iPS細胞の造腫瘍性に関してはさらに研究が進んでおり、iPS細胞由来の移植細胞を作製する過程においては、未分化iPS細胞以外にも、前駆細胞や目的細胞以外の細胞が存在しており、これらの細胞が造腫瘍性を獲得する危険性があることが明らかになってきている。従って、iPS細胞由来移植細胞の造腫瘍性を評価するためには、未分化iPS細胞のみならず、iPS細胞由来移植細胞に混入する不死化細胞を包括的に、かつ高感度に検出する方法論を確立する必要がある。本研究では、上述のRPE細胞をモデルとして、iPS細胞に由来する不死化細胞 を検出・評価するための研究を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は、不死化細胞マーカー遺伝子の同定として、正常RPE細胞では発現しておらず、不死化RPE細胞で高発現している遺伝子を、マイクロアレイを用いて網羅的に調べた。不死化RPE細胞として、1) ARPE-19: spontaneousに発生した不死化RPE細胞株 (ATCC より入手) 2) ARPE-19/HPV-16: ARPE19にヒトパピローマウイルスを感染させた不死化RPE細胞株(ATCCより入手) 3) h1RPE7:SV40 large T antigen をトランスフェクトすることにより樹立された不死化 RPE 細胞株(ECACC より入手可能)を用いた。不死化 RPE 細胞3株と、ヒト正常RPE細胞の3ロット(Lonza社)からRNAを抽出し、mRNA発現のマイクロアレイ解析を行った。マイクロアレイ解析は1群5例で行い、まず有意差p
|
Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、デジタル PCR を用いた高感度不死化細胞検出法の開発と評価を行う。正常 RPE 細胞中に存在する極微量の不死化細胞を検出するためには、不死化細胞マーカー遺 伝子の mRNA を高感度に検出する必要がある。近年開発された「QX100 Droplet Digital PCR シ ステム(BioLad 社)」(以下、デジタルPCR)では、非常に高感度かつ高精度な標的mRNAの検出が可能であり、1コピーのmRNAから検出できる。このデジタルPCRは従来の定量RT-PCR法と比べ100倍の感度があり、また、絶対定量が可能である。そこで、本申請研究では、デジタルPCRと本研究で同定した不死化細胞マーカー遺伝子RIMを組み合わせることにより、不死化細胞を検出する手法を確立する。 そこで、ヒト正常RPE細胞に一定量の割合で不死化RPE細胞を添加したサンプルを調整後、total RNAを精製し、今回開発した不死化細胞検出法で試験することにより、有用性の高い安全性試験であることを証明する。 本試験法が確立されれば、未分化iPS細胞検出法と併用することにより、iPS細胞由来RPE細胞に含まれる造腫瘍性細胞の存在を否定することができ、造腫瘍性に関して、非常に信頼性の 高い安全性試験として利用することが可能となる。 また、現在、候補となっているRIM遺伝子群の中には機能が明らかになっていない新規分子も含まれている。そこで、同定した RIM 遺伝子をヒト正常RPE 細胞に発現させて長期培養を行い、当該分子そのものが RPE細胞の不死化に機能的に関与するかを検証する。
|