2014 Fiscal Year Research-status Report
iPS細胞由来移植細胞に混入する不死化細胞検出法の開発
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25871244
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Research Institution | National Institute of Health Sciences |
Principal Investigator |
黒田 拓也 国立医薬品食品衛生研究所, 再生・細胞医療製品部, 研究員 (70648857)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | iPS細胞 / 網膜色素上皮細胞 / 不死化細胞 / 造腫瘍性細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
再生医療への応用が期待されるiPS細胞研究において、iPS細胞由来の移植細胞を作製する過程においては、未分化iPS細胞以外にも、前駆細胞や目的細胞以外の細胞が存在しており、これらの細胞が造腫瘍性を獲得する危険性があることが明らかになってきている。従って、iPS細胞由来移植細胞の造腫瘍性を評価するためには、未分化iPS細胞のみならず、iPS細胞由来移植細胞に混入する不死化細胞を包括的に、かつ高感度に検出する方法論を確立する必要がある。 本研究では、網膜色素上皮(RPE)細胞をモデルとして、iPS細胞に由来する不死化細胞 を検出・評価するための研究を行った。まず、マイクロアレイ解析により、不死化RPE細胞に高発現且つ特異的に発現する遺伝子を網羅的に探索した。それにより、不死化RPE細胞において正常RPE細胞に比べて100倍程度高発現しているRIM1遺伝子を同定した。さらに、正常RPE細胞に混入した不死化RPE細胞をRIM1 mRNAを標的としたqRT-PCRを行うことにより検出する試験法を開発した。また、この試験法の下方検出限界は混入率3%であることを明らかにした。次に、RIM1遺伝子の転写産物であるRim1pをマーカーとした免疫染色、またはフローサイトメトリ-で不死化RPE細胞を検出する方法の確立を試みた。マウスモノクローナル抗体を作成するため、大腸菌を用いた発現系でRim1p全長タンパク質を精製し、マウスに免疫を行った。ELISAスクリーニング陽性クローンについて不死化RPE細胞の免疫染色を行ったが、免疫染色に使用できるクローンを得ることは出来なかった。 今回開発したRIM1 mRNAをマーカーとしたqRT-PCRによる不死化RPE細胞検出法は、iPS細胞由来移植細胞の品質評価試験に非常に有用であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
不死化細胞マーカー遺伝子の同定として、不死化RPE細胞で高発現している遺伝子を、マイクロアレイを用いて網羅的に調べた。ARPE-19, ARPE-19/HPV-16, h1RPE7の3株の不死化 RPE 細胞と、ヒト正常RPE細胞の3ロットのマイクロアレイ解析を行った。マイクロアレイ解析は1群5例で行い、まず有意差p<0.05の遺伝子を選別し、その中で、不死化細胞、正常細胞間で20 倍以上発現量に差がある遺伝子を不死化細胞マーカー遺伝子 RIM(RPE immortalized cell maker gene) 候補とした。マイクロアレイ解析から得られたRIM遺伝子群について、より正確に各遺伝子の発現量を調べるため、定量 RT-PCRを行った。これにより、不死化RPE細胞、正常RPE細胞間で発現量の差が大きく、且つ、株間でのバラツキの少ない遺伝子(RIM1と命名)を不死化RPEマーカーとして同定した。 同定したRIM1 mRNAに対するqRT-PCRを行うことにより、不死化RPE細胞の検出を試みた。正常RPE細胞に10%~0.01%の割合の細胞数で不死化RPE細胞を混入させた後、Total RNAを抽出し、サンプルを調整した。このRNAサンプルを用いてqRT-PCRを行った。その結果、RIM1をマーカーとしたqRT-PCRにより検出可能な不死化RPE細胞の混入率は3%以上であることがわかった。 次に、RIM1の転写産物を検出することにより不死化RPE細胞の検出を試みた。そこで抗Rim1pマウスモノクローナル抗体の作製を行った。ELISAスクリーニング陽性のハイブリドーマ培養上清22cloneについて不死化RPE細胞の免疫染色によるスクリーニングを行った結果、不死化RPE細胞に発現する内在性レベルのRim1pを認識する抗体cloneを得ることが出来なかった。
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Strategy for Future Research Activity |
26年度の研究では免疫染色に使用可能な抗Rim1p抗体が得られなかったため、免疫動物をマウスからラットに変更して、抗体作製の再実験を行う。 また、現在、RIM1遺伝子群の中には機能が明らかになっていない新規分子も含まれている。IRM1がどのようなメカニズムで不死化と関連しているのかは、不明のままである。そこで、当該分子そのものがRPE細胞の不死化に機能的に関与するかを検証する。 RIM1の機能解析:RIM1が不死化に機能的に関与している事を調べるため、ZFN技術を用いて不死化RPE細胞RIM1をノックアウトし、不死化能が消失してしまうかを検証する。次に、レンチウィルスベクターを用い、正常RPE細胞にRIM1を過剰発現することにより、正常RPE細胞が不死化するかを検証する。また、RIM1タンパク質の結合タンパクの同定・解析を行い、RPE細胞における不死化のメカニズムを明らかにする。 他のがん組織におけるRIM1の発現量:RIM1は従来、骨格筋細胞おいて発現・機能している遺伝子として理解されているが、一方で、子宮がん組織で発現していることが近年報告されている(Sharmila et al. Cancer Res., 70, p4809-4819, 2010)。このことから、RIM1がRPE以外の細胞、組織においても不死化と関連している可能性が高いと考えられる。そこで、TissueScan Cancer and Normal Tissue cDNA Array(Origene)と呼ばれるcDNAのキットを用いてRIM1のがん組織における発現量を網羅的に調べる。その上で、RPE細胞以外の細胞における、不死化細胞マーカーとして汎用性を検証する。
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Causes of Carryover |
iPS細胞由来移植細胞に混入する不死化細胞の検出のため、正常な網膜色素上皮細胞細胞に発現せず、不死化した網膜色素上皮細胞にのみ特異的に発現している遺伝子を網羅的に探索した。その結果、不死化網膜色素上皮細胞マーカー遺伝子IRM1(immortalized RPE cell marker)を同定した。IRM1をタンパク質レベルで検出するために、マウスモノクローナル抗体の作製を試みたが、特異性の高い抗体クローンが得られなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
抗IRM1抗体を用いてIRM1をタンパク質レベルで検出することにより、免疫染色法、フローサイトメトリリー方と組み合わせることにより、混入した不死化網膜色素上皮細胞を高感度に検出することが期待できる。そこで、免疫動物をマウスからより種差の遠いラットに変更し、高力価のモノクローナル抗体の作製を再度試みる。
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Research Products
(8 results)