2013 Fiscal Year Research-status Report
数学認知と神経基盤を共有する高次認知機能の学習効果
Project/Area Number |
25871252
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Advanced Telecommunications Research Institute International |
Principal Investigator |
丸山 雅紀 株式会社国際電気通信基礎技術研究所, 脳情報通信総合研究所, 研究員 (70443033)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 行動実験 / 被験者課題の選定 / 国際情報交換(フランス) |
Research Abstract |
数学認知について、本研究対象とする学習機能の選定に向けた予備的な行動実験を被験者7名に対して実施した。その際、認知課題成績の個人差には日常経験における学習効果の差が反映されていることを前提に、課題成績の個人差に基づき選定することとした。国外の研究者との情報交換に基づき、実験では数学認知機能の1つである数感覚の個人差を計測すべく、被験者には視覚的または聴覚的に数刺激を提示し、数の大小に関する課題を遂行させた。視覚的に提示した場合、課題の正誤答と応答時間の行動データをドリフト拡散モデルに基づき解析することにより、数感覚をより正確に評価できることが判明した。一方、聴覚的に提示した場合は課題への取り組み方が被験者ごとに異なり、数感覚を正確に評価できない場合が存在することが分かった。以上の結果を踏まえ、本研究では数感覚の個人差ならびに学習効果を評価する際には、視覚的に刺激を提示することにした。 数感覚に加え、数式文法に関する認知能力の個人差を評価すべく、数式を構成する記号間の距離に関する知覚が数式文法の認知に依存することを利用した、行動実験を設計した。更に、他の高次認知機能としての言語文法に関する認知能力の個人差を評価すべく、文法認知に依存した単語間の距離に関する知覚を計測する行動実験を設計した。数式と言語の文法認知能力の計測原理は一致しているため、学習効果の共通性をより正確に示すことが期待できる。 言語・視覚の認知能力を反映する脳活動パターンを検出するために、認知課題成績と脳活動の個人差を手掛かりとした方法を試みることにした。各被験者は安静時の脳活動計測実験に参加した後に、認知課題を含む行動実験も参加する実験手順を新たに構築した。新しい実験手順により、課題成績と相関する安静時の脳活動パターンの検出が可能となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
学習効果を計測すべく、被験者に与える認知課題を検討し、数学認知の基礎と言える数感覚の能力を計測できる課題と、数式と言語の文法構造の認知能力ならびに距離の知覚能力を計測できる可能性のある課題を選定した。また、ドリフト拡散モデルを利用し、それぞれの認知課題で得られる行動データから認知能力をより正確に示せることを確認した。 被験者の認知能力を解読できる脳活動パターンの検出に向けて、当初は2~3人の被験者に対して学習前後における課題遂行時の誘発反応の変化を実施する予定であった。しかし、予備的に実施した行動実験では認知能力の個人差が大きく、少人数の被験者から収集した脳活動データから汎化性の高い脳活動パターンを検出することが困難であることが予測された。そこで、学習前後における脳活動の時間的変動よりも、個人差を主な手掛かりに脳活動パターンを検出することにした。個人差を手掛かりにする場合、20人以上の十分な数の被験者に対して実験を実施する必要がある。平成26年度(次年度)に研究者の所属機関の移動に伴い実験環境が変わることになったので、個人差と実験条件の差を区別できないデータが収集されるのを避けるべく、同一の実験環境でデータを収集するために、平成25年度(初年度)には本実験を実施せず、平成26年度に一括して行うこととした。
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Strategy for Future Research Activity |
所属機関の移動に伴う実験設備の変化により、当初の研究計画に含まれていたディコーディッドニューロフィードバック手法(DecNef)を用いた学習実験の実施が困難になると予想される。そこでDecNefの代わりとして、与えられた課題に対して被験者が正答した場合に報酬金を与えるなど、効率的に学習させる別の手法を検討する。 移動先の所属機関では、MRスペクトロスコピーの手法を用いた興奮性・抑制性神経伝達物質の脳内濃度を計測できる可能性がある。当初の計画では、機能的MRI計測(あるいは脳磁界計測)に基づく単一の脳活動指標を利用する予定であったが、今後は神経伝達物質計測に基づく脳内状態の指標を加え、複数の指標を活用して数学認知とその他の高次認知機能の学習効果の神経基盤共通性についてより詳細に示すことを検討したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
被験者へ呈示する刺激を制御するコンピュータ一式を購入する予定であったが、必要な仕様を満たすコンピュータの在庫がなく、納期が次年度になることが確実であったため、次年度に購入を延期した。 実験で提示する刺激の制御、ならびに脳活動と行動データを解析するためのコンピュータとソフトウェアをそれぞれ購入する予定である。
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