2013 Fiscal Year Annual Research Report
群れにおける身体性と内部ゆらぎによるその運動的機能における研究
Project/Area Number |
25880005
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
新里 高行 筑波大学, システム情報系, 助教 (00700163)
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Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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Keywords | 自己組織化 / 集団現象 / 探索と搾取のジレンマ |
Research Abstract |
昨年度は、主に局所的な振る舞いと大域的な振る舞いを繋ぐダイナミクスを明らかにするため,実験室に3m×3mの巨大な水槽を作り,淡水魚であるアユの群れを観察し,個体数における集団的な振る舞いを記録し,データ解析を行なった.その結果,以下に述べるような二つの事が明らかになった.一つは,群れの中で各個体は,常になんらかの形で全体量(平均速度・向き、重心)にアクセスしており,その振る舞いをそれらの量を参照しつつ振る舞いを自発的に変化させていることが明らかになった.もう一つは,魚の群れは,外敵がいないとき,トーラス構造と直進構造をつねに自発的にスイッチングしている事が明らかになった.この事実は群れにおいて,探索と搾取のジレンマを自発的に解消していく戦略を取っていることを示唆している.ひこの結果の一部は,既に,国内学会等で発表されており,とくに,第14回計測自動制御システムインテグレーション部門において,優秀講演賞を受賞している. また,魚の群れの観察を通して,行為の記号化とその解釈と使用のレベルの違いが如何に集団的な創発行動に貢献するかを明らかにするモデルを構築した.これは行為者は,自分の行為を一義的に指定する事ができないことが,結果的に,探索や縄張りまたは集団認知すら可能にするという事を主張するものであった.これの研究についても,第27回人工知能学会において口頭発表され,proceedingsは速報論文として採択されている.この論文はすでに,出版されている. 最後に,我々は上に述べたような,自らの行為を一義的に指定できないという事を,その原因が,行為の根拠が宙づりになっているものと指摘し,その本質を選択公理に求めたモデルと理論を与えた.この研究についても,国際学会である19thAROBにて口頭発表され,proceedingsは推薦論文に選ばれていて,今年度中に出版予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
群れの研究は,初年度であるにも関わらず,大規模な実験設備の設置と大量個体による群れの形成をうまくデータに落とす事に成功し,すでに上記に述べたような結果も得ており,予想以上の結果を得られたと言える.その評価は,例えば,計測自動制御学会における優秀講演賞からも分かるように,発表を聴いていた研究者の反応もよかった.また,群れについての論文も共同研究も含めて2件受理されており,一定の国際的な評価を得ていると言える. また,実験を通した観察から実装された二つのモデル(縄張り生成モデルと選択公理を用いた同一性モデル)は,研究計画にはなかったにも関わらず,多くの国内国際学会で発表され,これもまた,2つとも速報論文や推薦論文に選ばれるなど,高い評価を得ていることがわかる. 以上のことから,初年度は当初の計画以上の結果が得られたこととなり,その評価も国内国際論文や講演賞などから明らかなものとなったといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度も引き続き群れの実験とデータの理論的解析を行なって行く.一つは,昨年度得られた結果をまとめた論文を執筆し,国内外に精力的に発表して行くことである.これについては,すでに進行中である.さらにもう一つは,さらなる実験を行ない,アユの群れの集団的行動のダイナミクスをよりくわしく調べて行く.具体的には,より正確に個体をトラッキングできるように,実験環境を整備し,より大きな個体数の群れの運動を記録し,小規模な群れと大規模な群れを繋ぐような相互作用=ダイナミクスを明らかにする事である.このような群れのための,実験装置は国内外においても,非常にまれであることから,さらなる事実が明らかになることが期待される. また,上記のような実験に加えて,これまでとは異なる新しい群れのモデルが必要である.最近の研究では,これまで考えられてきたような,相手の向きと同じにするというモデルでは,説明できない事例が数多く存在している.「研究実績」欄で書いたような,トーラス構造と直進構造の自発的切り替えなどはその代表的例である.以上の事から,今年度は従来のモデルとは,他のモデルの可能性を実験事実と照らし合わせつつ模索していく予定である.
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Research Products
(8 results)