2013 Fiscal Year Annual Research Report
応力測定に基づいた月惑星ローバのロバストな自律航法システムの構築
Project/Area Number |
25880035
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
|
Research Institution | Japan Aerospace Exploration Agency |
Principal Investigator |
須藤 真琢 独立行政法人宇宙航空研究開発機構, 月・惑星探査プログラムグループ, 宇宙航空プロジェクト研究員 (80712851)
|
Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
|
Keywords | 月惑星ローバ / テラメカニクス / 航法誘導 |
Research Abstract |
本研究では,月惑星ローバのスリップに対して頑強な(ロバストな)自律航法システムの確立を目指し,(1)応力測定に基づいた車輪力学モデルの構築,(2)ローバの走破性を踏まえた経路計画アルゴリズムの提案,(3)車輪スリップの補償を組み入れた自己位置推定手法の構築に取り組んでいる.平成25年度の研究では,上記研究目的における(1)および(2)に焦点を置いて,研究を進めた. テラメカニクス(地盤と機械の相互関係を扱う学問)における車輪力学モデルを簡略化した,新たな力学モデルの妥当性を実験的に検証するため,車輪に働く応力を測定可能な車輪モジュールの新規開発に取り組んだ.続いて,開発した車輪を用いて,宇宙航空研究開発機構(JAXA)内の月面模擬フィールドで数多くの砂上実験を行った.これまで,異なる車輪スリップ条件下における実験を通じて,モデルの根拠となる基礎データを着実に累積している.このモデルの構築により,従来モデルでは困難であった,ローバの走破性のオンライン推定が可能になることが期待される. 上記と並行して,車輪や履帯の走行挙動を実験的にモデル化し,その特性を反映させた経路計画アルゴリズムを構築した.また,本アルゴリズムに基づいた数値シミュレーションにより,その有効性を確認した.さらに,カメラやレーザ距離計を用いた3次元情報取得システムを開発し,これらをローバテストベッドに搭載することで,実機によるアルゴリズムの実証にも取り組んだ.このアルゴリズムにより,与えられた路面状況(地盤や路面傾斜)から推定されるローバのスリップや消費電力に基づいた,最適な走行経路を計画することが可能となった. 今後の研究では,上記車輪モジュールによる走破性のオンライン推定と経路計画・自己位置推定アルゴリズムを統合することで,実用を見据えたローバの航法誘導システムの構築を目指す.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画において,平成25年度の研究では,研究目的における「応力測定に基づいた車輪力学モデルの構築」,および「ローバの走破性を踏まえた経路計画アルゴリズムの提案」に焦点を置いて研究を進めることを予定していた. 年度内の早い段階から実験環境の整備に取り組んだことにより,科学研究費補助金の配算後,即座に車輪モジュールを開発し,数多くの実験を実施することができた.このため,当初の予定通り,新たな車輪力学モデルの根拠となる実験データを順調に累積している. また,数値シミュレーションを用いることで,早期に経路計画アルゴリズムの有効性が明らかとなったため,ローバテストベッドの整備や3次元情報取得システムの開発に早くから着手することができた.その結果,当初予定していたテストベッドの整備に加え,次年度に予定していた,実機による提案アルゴリズムの実証試験を前倒しで実施している. 以上に示す通り,前年度の研究は,当初の研究計画に沿って着実に進められた.このことから,現在まで研究はおおむね順調に進展していると考える.
|
Strategy for Future Research Activity |
前年度に開発した車輪モジュールを用いることで,ローバの走破性をオンライン推定することが可能である.今後の研究では,まず,この車輪モジュールをJAXAが所有するローバテストベッドに搭載し,実機による走行試験を行うことで,走破性の推定精度について検証する.併せて,前年度に提案した経路計画アルゴリズムをローバに実装することで,車輪モジュールによりオンライン推定される走破性を基に,提案アルゴリズムの実証実験を行う. 続いて,本研究における3番目の要素課題である,車輪のスリップを用いた補償をビジュアルオドメトリに組み入れた自己位置推定アルゴリズムの導出・検討に取り組む.このアルゴリズムを実証するため,ローバテストベッドにステレオカメラを搭載し,ステレオカメラによるビジュアルオドメトリ手法を実装する.具体的には,月面におけるクレータ内部での使用も想定し,広い光学環境に対応可能なワイドダイナミックレンジカメラを用いたステレオ処理を検討している.さらに,上述した車輪モジュールをローバに搭載することで,「車輪のスリップを推定し,そのスリップを用いた補償をビジュアルオドメトリに組み入れる」という一連の自己位置推定シーケンスに関する実証試験を行う. 本研究の総括として,上述した経路計画および自己位置推定アルゴリズムに基づいた自律航法システムをローバテストベッドに実装し,実証試験を実施する.これにより,将来の実用を見据えたローバの航法誘導システムの実現を目指す.なお,これらの研究成果を取りまとめ,適時学術雑誌と学会において研究発表を行う.
|