2013 Fiscal Year Annual Research Report
環境保全と自然資源利用の両立-事例を用いた共存モデルの構築-
Project/Area Number |
25881003
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
渕上 ゆかり 大阪大学, 環境イノベーションデザインセンター, 特任研究員 (70712834)
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Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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Keywords | 自然共生システム / 環境保全 / 自然資源利用 / 地域研究 / マングローブ / 沿岸域地域住民 / 学際的研究 |
Research Abstract |
(1)林分成長量測定と製炭利用のモニタリング: ①平成24年度以前の毎木調査実施場所を視察し、更新の状況を測定した。その結果、薪炭利用による伐採の影響は受けておらず、前回の伐採時からは10年以上の間隔があいていると推測される。マングローブ木炭に適したマングローブ個体の樹齢は、最低でも10年以上が期待されることから、現在のところは自然の再生能力を超えた周期での利用は行われていないと考えられる。また、平成26年度に予定している毎木調査のために、調査地の選定を行った。②マングローブを用いた製炭業を行っている炭窯において、聞き取り調査によって得られた木炭生産量からマングローブ林伐採量を概算した。本調査地における持続的利用を可能にする最適利用量の検討を行うために、次年度に行う植生調査結果から成長量を概算し、利用量と成長量の比較を行う。 (2)政府レベルでの法規制・政策: 州(国)と市の管理局の間の連携が取れておらず、国としての環境対策は浸透していない。特に本調査地は工業開発が促進されている場所であるため、環境保全の優先度は低い。しかし植林活動に対する補助金は存在し、製炭業従事者や学生による保全活動は行われている。このような矛盾した状況下にある本調査地のマングローブ林面積は、統計結果によると減少の一途にある。 (3)企業レベルでの環境対策: 日本企業による、現地政府・地方政府・教育機関との連携の状況を明らかにした。日本企業における資金提供に対し、インドネシア側はマンパワーおよび伝統的知識を供給し協働を行っている。その結果、環境保全だけでなく、環境教育効果や雇用も生み出されている。同時に、資金面での問題が解決されれば、地域住民の自発的な環境保全活動などに繋げることが出来るといえる。本結果は、「環境・経済・社会」の3つを考慮しした上での持続可能な保全活動計画の成功事例を提示できる可能性を秘めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度にも毎木調査を実行する予定であったが、昨年度の測定時からそれほど期間が立っていなかったため、成長量が大きく数値に表れなかった。そのため、もう1年の期間をおいて再測定することとした。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、以下の2つの研究を行う。 (1)林分成長量測定と製炭利用のモニタリングから、「地域住民による利用量」と「マングローブ林成長量」からの持続的利用の検討を行い、最適利用量を概算する。 (2)総括として、マングローブ林生態系保全と持続的利用の共存モデルの構築を行う。これまでの結果を受け、経済成長・社会制度・環境保全の3つの要素を考慮した「現代社会に適応するマングローブ林生態系と人間の共存モデル」を、グラフを用いて提示する。既存研究の結果を作成グラフ上に記し、本研究結果を指標として環境状況の評価を行う。予定している共存モデルは以下の2つである。①環境クズネッツ曲線(縦軸:環境破壊・汚染量など、横軸:経済水準・GDP など)をもとに、環境破壊量をマングローブ林面積の減少などに読み替え、経済成長と環境保全の関係性を表す。②最適・限界利用量、必要最小限の環境規制などの具体的な数値・情報を示し、自然資源利用の持続性が維持される範囲を示す。
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