2013 Fiscal Year Annual Research Report
アマチュアのエリート・スポーツ組織におけるビジネス化とスポーツとのバランス
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25882017
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
中村 英仁 一橋大学, 大学院商学研究科, 講師 (30700091)
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Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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Keywords | アマチュア・スポーツ組織 / 商業化 / 組織マネジメント力の向上 / 資源の安定的確保 / 自律性喪失への対策 |
Research Abstract |
本研究の目的は、国際大会に出場するようなエリート・スポーツ選手の育成を目的とするアマチュア・スポーツ組織(以下、ASO:Armature Sports Organization)と、ASOに商業化をせまる社会的圧力との関係性を再検討することである。既存研究は、「商業化はASOの自律性を損なうため、ASOは商業化を嫌う」という単純な対立構造を前提としている。しかしながら現実的には、商業化はASOに便益をもたらすこともあり、その実態は明らかにされていない。そこで平成25年度は、商業化によって生じるASOに対するデメリットだけでなく、メリットも評価した。具体的には、(1)商業化をせまられたASOを特定し、(2)そのASOが商業化によってどのようなメリット/デメリットを享受したのかを整理した。(1)では、企業スポーツを抱える企業が、バブル崩壊後から今日までの間(1990~2013年)に、本業に資する便益をもたらそうとして、企業スポーツ組織にどの程度強く商業化圧力をかけたのか、約100社を分析した。その結果、日本的経営慣行を部分的または全体的に中止している企業群で、強く商業化をASOが迫られていることがわかった。また(2)では、該当企業にインタビュー調査を実施した。その結果、そうした商業化によって、ASOの組織マネジメント力が向上したり、成果を出し続けることで資源を安定的に確保できるようになったりするというメリットを享受できることが明らかとなった。一方、商業化によりやはりASOの自律性が損なわれるが、マネジメント努力でその影響を最小限に抑えることが可能であることもわかった。こうした分析の結果は、平成26年9月開催の、欧州スポーツマネジメント学会(European Association for Sport Management)で発表する(審査通過済み)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は、まずビジネス化のメリットとデメリットを評価し、次にそれらを踏まえて組織がどのように反応・選択してきたかを明らかにする計画であった。具体的には平成25年度の作業として、次の3点を計画していた。第一に、専門雑誌や調査報告書、新聞等の二次資料を用いて、ビジネス化の経緯を調査することである。第二に、ASOがビジネス化した経緯を把握したうえで、企業担当者や監督、選手といった主体にインタビュー調査を実施することである。平成25年度は26人に対してのインタビューを計画していた。第三に、集めたデータを定性データ分析ソフトにかけて、分析することである。こうした計画は概ね達成された。ただし、最終的に、第一作業の収穫が想定以上に多く、予算を集中的に投下したため、インタビュー人数を大幅に削減せざるを得なかった。しかしその点は、従来収集したインタビューデータを活用し、研究計画が遅延するという事態をうまく回避することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度に実施したビジネス化のメリット/デメリット整理を踏まえ、平成26年度は、組織が商業化に反応・選択してきたメカニズムを明らかにしていく。具体的には、平成26年度の研究作業としては、次の3点が挙げられる。第一に、ビジネス化の背景がパネルデータで整理されているので、それを統計的に処理し、ビジネス化に重要な要因が何だったかを特定することである。第二に、その分析結果を踏まえた上で、ASOがビジネス化した経緯を、企業担当者や監督、選手といった主体にインタビュー調査を実施することである。平成26年度は、14人に対してのインタビューを計画している。第三に、集めたデータを定性データ分析ソフトにかけて、分析することである。分析の結果は、国内外スポーツマネジメント学会誌(国内:スポーツマネジメント研究、国外:European SportManagement Quarterly)に投稿する。また、国外で平成27年度に開催される学会の申請が平成26年度にあるため、その申請書作成作業も実施する。具体的には北米スポーツマネジメント学会(North American Society for Sport Management)、ヨーロッパ組織学会(European Group For Organization Studies)に投稿する。
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Research Products
(1 results)