2013 Fiscal Year Annual Research Report
筋インスリン抵抗性に対するnotch2の作用機序及び運動・食事との相互作用の解明
Project/Area Number |
25882024
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
|
Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
増田 慎也 長崎大学, 原爆後障害医療研究所, 産学官連携研究員 (80638403)
|
Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
|
Keywords | 骨格筋 / インスリン抵抗性 / Notchシグナル / 筋萎縮 |
Research Abstract |
まず筋線維にNotch2が発現することを確認するため、サテライト細胞特異的にDTAを発現させ、サテライト細胞を除去した筋組織と通常の筋組織のNotch2タンパク量およびNotch2標的遺伝子であるHey1,Heyl遺伝子発現を比較したところ有意差は認められなかった。また、in vitro系においても同様に、DTAによってサテライト細胞を選択的に除去させた培養筋管細胞において、サテライト細胞を含む筋管細胞と同レベルのNotch2タンパク量およびHey,Hesファミリーの遺伝子発現量が認められた。以上のことから、Notch2シグナルは分化後の筋管細胞・筋組織にも観察されることが確認された。 次にRNAiによるNotch2遺伝子ノックダウン筋管細胞にインスリンを負荷しインスリン感受性を測定したところ、コントロールの筋管細胞よりも強いAktのリン酸化レベルが観察された。また、サテライト細胞特異的Notch2ノックアウトマウスから採取したサテライト細胞から分化させた筋管細胞でも同様に、コントロールの筋管細胞よりも強いAktのリン酸化レベルが認められた。ゆえに、分化した筋細胞において、Notch2はインスリン感受性を負に調節する可能性が示唆される。 In vivo系においては、Notch2の活性型ドメインを筋線維特異的に過剰発現させたマウス(N2ICDマウス)に高脂肪食を継続的に与えたところ、野生型マウスに比べ、糖負荷試験の成績が悪化しやすい傾向があった。さらに、N2ICDマウスは腓腹筋・前脛骨筋などの速筋に顕著な筋萎縮を示すと同時に、type IIb fiberの比率の減少を示した。Notch2シグナルは成熟筋細胞のインスリン感受性を負に調節するだけでなく、全身の骨格筋量を負に調節することで、生体の耐糖能を減弱させる可能性が推察される。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでNotchシグナルは専ら幹細胞研究において注目されており、成熟した組織細胞においてNotch2が発現しているか否かということ自体、明確に示されていなかった。本研究はNotch2が成熟組織細胞にも存在することを強く示唆するデータを得た。これは、個体のエネルギー代謝にかかるNotchシグナルの役割を解明していくうえで非常に重要なデータである。 また、Notch2ノックダウンによるインスリンシグナルの減弱をin vitro系で確認していること、および筋線維特異的Notch2活性化型ドメイン過剰発現マウスに著明な筋萎縮の表現型が確認されてた。これらはメタボリックシンドローム・ロコモティブシンドロームの発症機序解明に役立つモデルとして、Notch2遺伝子改変動物・細胞が有用である可能性を示唆するものであり、現時点で、本研究はおおむね順調に進んでいると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
Notchシグナルが筋萎縮を惹起するメカニズムの解明に重点を置いて研究を進めていく予定である。前年度、サテライト細胞特異的Notch2ノックアウトマウスからの初代培養細胞を用いてin vitro系での研究は行えたものの、筋線維特異的Notch2ノックアウトマウスの作成に成功しなかった。当時用いたloxPマウスが狙い通り作用しなかった可能性が高く、現在、新たなloxPマウスを作製中である。
|
Research Products
(1 results)