2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25882025
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Research Institution | Akita University of Art |
Principal Investigator |
落合 里麻 秋田公立美術大学, 美術学部, 助手 (00713710)
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Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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Keywords | 駕籠 / 乗物 / 江戸 / 構造 / 木工 / 木工技術 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、江戸時代に交通手段の一つとして活躍した駕籠について、木部の技法・材料・構造に焦点を当てて行った研究である。駕籠は現在も全国各地に残されているが、その具体的な内容については文献にも詳しい記載がなく、木工技術の視点での研究もされていない。そこで本研究では肉眼観察と実測を中心とした現地調査を行い、内容を明らかにすることにした。得られた成果が今後の修復作業の手掛かりとなり、多くの人に駕籠についての理解を深めてもらうことがこの研究の目的である。 駕籠は大きく「乗物」と「駕籠」に分けられる。支配者層(武家など)が使用したものが「乗物」、被支配者層(庶民)が使用したものが「駕籠」である。つくりも用途も異なり、「女乗物」「官僧用乗物」「法仙寺駕籠」「山駕籠」等が存在する。現地調査では、これらの中から数挺ずつを調査対象に選び、詳しい調査を行った。肉眼観察では、木や竹を組む際の木工技術や材料について観察し、実測では詳細に採寸した後に正確な図面(三面図、断面図、立体図)を作成した。 『守貞謾稿』(喜田川守貞、1853年一応完成)には数種類の駕籠の解説が書かれており、当時からある程度の基本形が存在したことがわかる。現段階の現地調査の結果を照らし合わせてみると、『守貞謾稿』の内容に近い形状や寸法、仕様の傾向があることが確認できた。また、『婚禮道具圖集』(岡田玉山、1793)には女乗物についての解説図が描かれており、尺貫法で書かれた数字をメートル法に換算し、現存する女乗物との比較を行った。この結果、形状・寸法共に現存する女乗物に近いことがわかり、当時の女乗物の製作における雛形であった可能性が高いと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
25年度は現地調査の予定が諸事情により遅れてしまったが、26年度に繰越した予算では問題なく日程調整ができたため、少しの遅れ程度で現地調査を行うことができた。調査を申請したほぼ全ての所蔵機関から、快く調査を了承していただいた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度では、現地調査の内容のまとめを行う。フォーマットを作り、実測図を含む調査結果をまとめ、研究終了時には所蔵機関にも送付する(貴重なデータであり、送付を希望されることが多いため)。文献調査でわかった駕籠の起源や分類などの内容と、現地調査の結果や考察を合わせ、一般の人にもわかりやすい小冊子を制作する。また、主要な接合部のほぞ組みの再現を行い、駕籠の製作に用いられた技術を確認する。これらの研究内容について最終的には論文を書く。 なお研究期間が約1年半と短いため、研究終了後に学会での発表等を行う予定である。
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