2013 Fiscal Year Annual Research Report
疲労動物モデルにおける尿素回路の代謝変化と、オルニチン投与による抗疲労効果検証
Project/Area Number |
25882051
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
久米 慧嗣 独立行政法人理化学研究所, ライフサイエンス技術基盤研究センター, 特別研究員 (30708441)
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Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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Keywords | 疲労・慢性疲労 / 応用健康科学 / メタボローム解析 / 遺伝子発現解析 / 尿素回路 / 疲労代謝回路 / エネルギー代謝異常 / バイオインフォマティクス |
Research Abstract |
慢性疲労症候群(Chronic Fatigue Syndrome: CFS)は、原因不明の強い全身疲労倦怠感などが長期間に渡り継続する病態である。先行研究により、CFS患者の血液では、ATP産生やクエン酸回路などのエネルギー代謝に異常が見られることが明らかとなった。さらに、代謝物の数理モデル解析を進めることにより、エネルギー代謝異常には尿素回路の代謝変化が深く関わることが分かりつつある。本研究では、CFS患者と同様の代謝パターンを示す疲労モデル動物を用い、オルニチンを中心とする尿素回路における代謝解析、および遺伝子発現解析を行った。疲労モデル動物は、ラットを水深2.2 cmの水を張ったケージ内で5日間飼育することにより作製した。疲労負荷後、ラット肝臓中の血液を灌流除去した後、肝臓を採取して網羅的代謝物解析や遺伝子発現解析を行った。疲労負荷群において、解糖系代謝物は減少し、さらにTCA回路前半のシスアコニット酸・イソクエン酸が減少する一方、回路後半のコハク酸およびリンゴ酸が増加していた。尿素回路に関連する代謝物についても、尿素やオルニチンは増加するものの、シトルリンは減少するなど、尿素回路動態も疲労負荷の影響を受けることが分かった。疲労負荷群において、尿素回路やグルタミン代謝に関わる酵素やトランスポータの遺伝子発現を半定量的PCR法により調べたところ、疲労負荷群では、尿素回路の酵素群、グルタミナーゼ、GABAアミノ基転移酵素、および各種トランスポータの発現が亢進していることが判明した。これらの結果から、特に、オルニチンやグルタミンからGABAを介してTCA回路内のコハク酸に流入する疲労特有の代謝経路「疲労代謝回路」の存在が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
疲労負荷モデル動物を用いて生体代謝に重要な肝臓を対象にメタボローム解析を実施した。その結果、ATP産生の低下とともに、ヒトの慢性疲労病態と同様に、クエン酸回路、尿素回路、およびグルタミン代謝が連動して変化することを明らかにした。さらに、関連酵素群の遺伝子発現解析や代謝シミュレーション法を用いた数理解析を通じて、疲労病態時には、尿素回路内のオルニチンやグルタミンからγ-アミノ酪酸(GABA)経路を介してクエン酸回路内のコハク酸へ流入する代謝経路、すなわち「疲労代謝回路」が存在することが判明した。この研究結果は、当初の研究計画をさらに展開させて得られた成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
疲労代謝回路によるエネルギー代謝への影響を明らかにするために、疲労負荷ラットに対して13C-オルニチン(シグマ社より購入予定)を経口投与し、尿素回路や他の代謝経路への変換パターンを評価する。本実験では、経時的に肝臓を摘出し、ホモジネートした後に、抽出液の代謝物を質量分析法などにより測定する。また、疲労代謝回路の律速酵素であるGABAアミノ基転移酵素を阻害し、尿素回路の代謝パターンやATP産生に与える影響も調べる予定である。
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Research Products
(2 results)