2013 Fiscal Year Annual Research Report
使用者の姿勢と接触圧力を制御する身体支持手法の研究
Project/Area Number |
25882054
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
|
Research Institution | 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所) |
Principal Investigator |
高嶋 淳 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 福祉機器開発部, 研究員 (90711284)
|
Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
|
Keywords | 褥瘡防止 / 体圧分布制御 / 安定性解析 / 計算機シミュレーション / 姿勢制御 |
Research Abstract |
本研究は,福祉機器の身体への適合を支援する技術として,解析的に導くことが困難な,複数のアクチュエータによる身体の姿勢制御と接触圧力制御とを両立する制御技術の確立を目的とする.本年度は,1.General-Purpose computing on Graphics Processing Units(GPGPU)というグラフィックカードを用いた高速計算機による計算機シミュレーション環境の構築,2.簡易モデルを用いた平衡点周りの安定性解析および,3.作成した簡易モデルをもとに,身体と物体との接触圧力を低く保つ三次元形状を作製し効果の検証を行った. (1)高速計算技術の実績,費用対効果を調査し,GPGPU手法を用いた高速計算機が適当であると判断し,導入を行った.GPUのメーカとして特に大規模な科学技術計算に実績のあるNVIDIA社製のGPUを選定し,GPGPUのプログラム環境として同社のCUDAを用いた計算機シミュレーション環境を構築した. (2)簡易モデルは,身体を1自由度の剛体とし,バネとダンパからなるアクチュエータを並列に複数本並べたもので支持するモデルとした.解析は簡単の為,身体の重力方向への並進,回転方向の2次元運動を仮定し,平衡点周りで線形化を行い状態方程式を導出した.それを用いて平衡点周りの安定性解析を行い,アクチュエータ数によらず安定であることを示した. (3)アクチュエータをパッシブなマットレスとしたときの簡易モデルに基づいて,身体とマットレスとの接触圧力から接触圧力を低減する三次元形状を作製する手法を構築した.接触圧力から身体およびマットレスにかかる力を計算し,それによる身体の変形状態を導いた.これを元に身体の変形を抑制する三次元形状を計算した.算出した三次元形状を熱可塑性樹脂を用いた三次元プリンタにより造形し,これによる接触圧力低減を確認した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は,解析的に導くことが困難な,複数のアクチュエータによる身体の姿勢制御と接触圧力制御とを両立する制御技術の確立である.それに対し,本年度は(1)計算機シミュレータの作製(2)簡易モデルを用いた平衡点周りの安定性解析,(3)剛体に対する接触圧制御の実現をマイルストーンに挙げていた. (1)に対し,当初用いる予定であった物理計算エンジン,ODE,がGPGPUに対応していないために導入を取りやめ,CUDAによる高速演算技術に対応した計算機シミュレーション環境を構築した.簡易モデルに対する計算機シミュレーションは,(2)により導出した平衡点周りにおける簡易モデルを使って実装を行い,(1)を達成した. (2)に対し,1自由度の剛体と複数のアクチュエータからなる簡易モデルを構築し,平衡点周りで線形化を行うことで解析的に安定であることを示し,(2)を達成した. (3)に対し,(1),(2)で構築した簡易モデルの計算機シミュレーションに対し,平衡点位置から外れた状態から開始しても平衡点に戻ることを確認し,ステップ入力に対する安定性があることを確認し(3)を達成した. 次年度に予定している(I)剛体および剛体リンクに対する接触圧と姿勢制御の実現に向けて,(1)計算機シミュレーションを実施できるように環境を構築し,(2)簡易モデルによる平衡点周りの安定性を確認した.(3)により平衡点周りの接触面形状を実際に作製し,それと人体との接触圧計測を行い,接触面形状による接触圧力制御が可能であることを確認した.これにより複数のアクチュエータによって剛体を支持し,接触圧と姿勢との制御を可能とする必要条件を確認した.これらの項目を達成したことにより,次年度の研究計画を滞りなく遂行できると考える.
|
Strategy for Future Research Activity |
身体の姿勢制御と接触圧力制御とを両立する制御技術を確立するために,これまで,物体の重心と接触圧力の関係を調べてきた.次年度はそれに加え,重心周りのモーメントを考慮し,それを含めた接触圧力分布制御を行う.簡易モデルによる計算から姿勢と接触圧力に強い相関があることが分かったため,目的姿勢および目的接触圧力分布への同時到達は困難な場合があることが予想される.それに対し,目標値の制限を緩和し,実際の人体へ影響から実用に即した目標値を設定することで,シミュレーションによる目標達成度を検証する. まず,(I)剛体に対する接触圧と姿勢制御の実現のために,物体の姿勢を保持したまま圧力分布が変更できるか調べる.物体の形状や質量分布,姿勢が既知であれば,アクチュエータの合力と物体の重心周りのモーメントが変更前と変更後で保存することで物体の運動を生じさせず圧力分布を変更できる. 次に,(II)安定な2状態を始点と終点として選び,始点の状態から終点状態へと遷移できるか調べる.任意の点から任意の安定状態へ遷移できるならば,剛体に対する接触圧と姿勢制御の同時実現が可能であることが示せる. 最後に,(III)支持物体を剛体リンクとし,物体の姿勢を通してアクチュエータが相互作用する場合を考える.この場合,上記の物体のパラメータを既知にする方法があれば,上記の相互作用を見積もることが出来,外乱として処理することができると考える.
|