2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25882057
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Research Institution | National Institute of Occupational Safety and Health, Japan |
Principal Investigator |
佐藤 嘉彦 独立行政法人労働安全衛生総合研究所, 化学安全研究グループ, 任期付研究員 (60706779)
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Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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Keywords | 爆発事故防止 / 労働安全 / 酸化反応 / 反応機構 / 熱的危険性評価 |
Research Abstract |
酸化反応は化学産業の中で一般的に用いられている反応であるが,発熱反応であるために爆発事故の事例が多い.本研究では,酸化剤に対して不活性な容器内での発熱開始温度及び発熱量を得る評価手法を開発するとともに,適切な危険性評価に支障をきたす原因と考えられる金属イオン及び金属微粒子による酸化反応挙動への影響を明らかにする. まず不活性容器内での発熱挙動評価手法の整備を行った.示差型断熱熱量計の試料容器(ニッケル-クロム合金製)の内側に各種コーティングを施すとともに,試料容器に複数の厚さのガラス容器を挿入し,容器材質の影響による分解挙動の変化が大きい有機過酸化物の発熱挙動を測定し,その変化を検討した.その結果,セラミックコーティング,ダイアモンドライクカーボンコーティング及び薄いガラス容器は強度に難があった.また,金メッキについては,試料によっては極端に低温から分解し,不活性な条件ではなかった.このことから,適切な厚さのガラス容器を挿入して金属との接触を遮断することにより,容器材質の影響を受けずに発熱挙動の評価ができることがわかった.また,複数の有機過酸化物について一般的に熱的危険性評価に使用されている断熱熱量計との評価結果の比較を行った.その結果,容器材質の影響を受けて分解が活性化する試料を除き,反応初期時の評価結果はよく一致したことから,上記で整備した不活性な容器内での発熱挙動評価手法は,熱的危険性を過小に評価することがないことを確認した.さらに,3級ピリジン樹脂と硝酸との反応について,硝酸を配位した3級ピリジン樹脂の昇温時の反応挙動を検討し,昇温時に脱離した硝酸により3級ピリジン樹脂が酸化されることを明らかにした.上記の評価手法の整備及び反応挙動の解明は,次年度に実施する金属イオン及び微粒子による酸化反応挙動への影響を評価するための基盤となる成果である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
酸化剤に対して不活性な容器内での発熱挙動評価手法の整備を行うことができた.また複数の有機過酸化物の熱分解反応について,異なる評価手法で得られた熱的危険性に関するパラメータの比較を行い,整備した発熱挙動評価手法により,熱的危険性を過小に評価することがないことを確認した.さらに,硝酸を配位した3級ピリジン樹脂の昇温時の反応挙動を検討し,昇温時に脱離した硝酸により3級ピリジン樹脂が酸化されることが明らかとなった.これらによって,金属イオン及び微粒子の影響を受けない状態での酸化反応の発熱挙動を検討することが可能となったと考えられ,当初の目的を達成したといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,3級ピリジン樹脂の硝酸による酸化反応の系に金属イオンおよび微粒子を添加して発熱挙動を測定し,その変化を把握する.また,生成物の化学分析を行い,昇温時の反応挙動を検討する.それらの知見をもとに,金属イオン及び微粒子の共存によって変化した発熱挙動に寄与する反応機構を明らかにする.なお,不活性な容器内での発熱挙動評価手法の整備を行った分析装置が現在故障しているため,修理が完了するまで,感度が低いが酸化剤に対して不活性な状態での測定が可能な分析装置を代替として,検討を行う予定である.
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