2013 Fiscal Year Annual Research Report
南部アフリカの国家・社会変容と人の国際移動に関する比較史的研究
Project/Area Number |
25883008
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Research Institution | Tsuda College |
Principal Investigator |
網中 昭世 津田塾大学, 付置研究所, 研究員 (20512677)
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Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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Keywords | アフリカ / 移民 / 経済史 / 国家 / 社会変容 |
Research Abstract |
H25年度の研究を通じ、南アフリカおよびジンバブエ・ザンビア(南北ローデシア)における労働市場の形成と発展と合わせて、主要労働力供給地となっていたモザンビークおよびマラウイの移民送り出し地域を取り巻く条件の変化を把握した。国家の管理下におかれる正規の移民について、特に英領植民地に関しては、南部アフリカの広範な地域において、先発的な労働市場における労働力管理の手法が後発の労働市場において発展的かつ組織的に模倣・継承されていることが明らかとなった。具体的には、南アフリカにおける周辺植民地からの労働力調達の手法は、南ローデシアでもモデルとされ、さらに同様の手法は南アフリカによる支配下に置かれたナミビアにおいても継承されていたことを把握した。 また、ジンバブエおよびマラウイ、ザンビアの労働力需要と供給に関する個別の項目に関する調査の進捗状況は以下のとおりである。 ①労働力供給をめぐる二国間協定に関する植民地外交:モザンビークと南北ローデシア間の二国間協定は、モザンビークと南アフリカ政府間協定をモデルとしているが、対南アフリカ外交文書を所蔵しているポルトガル歴史外交文書館には対ローデシア関連の該当史料は確認できなかったため、次年度にモザンビークでの調査によって補う必要がある。 ②労働市場の競合と調整:モザンビークおよびマラウイの労働力をめぐってジンバブエの労働市場と南アフリカの労働市場は競合関係にあったが、両者の間で労働力供給地としてモザンビークの一部およびマラウイの分割が行われた。初年度はこの分割が労働者の送り出し地域に与えたインパクトを把握した。 ③二国間協定の枠外にある非正規移民の歴史的実態:南北ローデシアに流入するモザンビーク移民の実態については、初年度は特に南ローデシアへの流入規模について把握した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の史料調査の過程でポルトガルにおいて所蔵されている旧植民地関連の一次史料が当初の想定以上に散逸していることが確認された。ただし、それと同時に散逸した部分的な史料の所蔵先も確認しえたため、次年度はより効率的な史料調査が可能である。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の調査を通じ、南部アフリカ地域の労働移民をめぐる国家の管理網を鳥瞰図的にとらえることが可能となったため、次年度はより個別の事例に特化して分析を掘り下げるために重点的にモザンビークおよびアンゴラ関連の史料調査を行う。 また、先行研究が皆無であり史料状況の把握が困難な旧ポルトガル植民地関連史料の所在については、他の研究者との共有のためにも、別途史料状況に関する調査報告を記す機会を設ける。
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