2013 Fiscal Year Annual Research Report
八重山諸島石垣島における台湾系集落の居住環境と空間構成原理
Project/Area Number |
25883010
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Research Institution | Kobe Design University |
Principal Investigator |
長野 真紀 神戸芸術工科大学, 芸術工学研究科(研究院), 助手 (10549679)
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Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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Keywords | 台湾系集落 / 石垣島 / 居住環境 / 空間構成原理 |
Research Abstract |
平成25年度は、9月から3月までの期間中に2回の現地調査と3回の文献調査を行った。現地調査では、集落の地理位置や居住環境の把握に努め、元居住者4名からヒアリングを行った。また、3月末に行われた台湾の伝統行事である「清明節(シーミー)」に参加し、ハレの日の調査を行った。清明節は一族で祖先の墓参りをする日で、日本のお盆にあたる年中行事である。台湾台中出身者のF家に密着し、準備から終わりまでの一日を記録した。また、可能な限り聞取りを行い、台湾と石垣の居住環境や生活慣習の比較について考察を進めた。 文献調査では①国立国会図書館関西館にて博士論文、歴史地図、移民に関する書籍を中心に収集を行い、②那覇法務局にて地積測量図、公図を閲覧、③沖縄公文書館にて米軍空中写真、地籍簿、一筆土地図、面積測定図、八重山に関する文献を収集、④石垣市立図書館にて研究対象地の名蔵・嵩田両地区の歴史と環境に関する文献を収集、台湾の⑤國家圖書館にて日本統治時代の地図及び写真を閲覧、⑥臺灣圖書館にて日本統治時代に作成された琉球に関する日本語記述の文献7冊と中国語記述の文献5冊の閲覧及び収集を行った。 現地調査では、集落に重点を置いて空間構成の読み取りを行った。名蔵・嵩田集落では、石垣島入植後、現在の空間構成に至るまで数度の移住を繰り返している。移住前の居住環境を読み取り、現在との比較を進めながら、空間の変化と歴史的要因について分析を進めている。名蔵は1647年に既に存在していた元名蔵と呼ばれる集落が前身であり、1686年、1877年の二度にわたり移動を行い、1930年代に台湾からの移住者によって現在の名蔵集落が形成された歴史を持つ。移動を経て居住空間がどのように変遷してきたのか、文献調査で得た資料を元に空間の変容について分析を始めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
6~7月にかけて研究の方向性を確認し、交付決定前の8月には沖縄公文書館にて予備調査を行った。ここでは主に、研究を始めるための基礎資料の収集を行った。交付決定後、9月に予定していた伝統行事「土地公祭」は職務の都合上、参加することができなかったため、次年度に持ち越すこととなった。この祭りは例年、旧暦の8月15日に実施されるもので、石垣島に居住する多くの台湾人が名蔵集落の御嶽に集い、伝統に倣って土地の神(土地公:福徳正神)を祀る行事である。ハレの日の空間や聖域の使われ方、御嶽の位置づけを見ることのできる貴重な行事であり、平成26年度は必須調査事項として位置づけている。 12月には名蔵・嵩田集落の全体を把握するために景観調査を行った。現況地図及び空撮写真(米軍写真・国土地理院空中写真)との比較を通して、集落景観の把握と地理的状況について調査した。また、名蔵集落に居住しているキーパーソンとなる2名へヒアリングを行い、空間・生活・歴史について調査を進めると同時に、今後の集落調査を進めていくための人的ネットワークを構築することができた。 2月には沖縄県公文書館及び沖縄県立図書館にて、主に明治期の文献収集を行った。また、空撮写真と地積測量図・公図を収集し、現在までの土地利用の変遷について分析を始めている。 3月には台湾の国立図書館にて、主に日本統治時代の文献収集を行った。ここでは、学芸員の協力を得て琉球文献目録を探索し、戦前及び戦後の沖縄に関する文献の一覧を作成した。これは本研究のみならず、これからの研究に活用できるデータベースの組み立てに役立つものであると考える。 3月末には、台湾の伝統的行事である「清明節」に参加し、一日の記録を取ることができたが、当日現地で収集した資料を年度内に整理することができなかったため、早急にまとめの作業を進めていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
1年間の研究成果をもとに4月中に研究方法の検証と調査項目の妥当性を再検討し、研究の方針と年間スケジュールを固める。1年目の研究成果は8月中にまとめ、秋季に開催予定の学会大会で口頭発表を行う。 7~8月にかけて三度の現地調査を予定しており、7月の調査では前年度の調査結果を確認するための作業を行う。不足資料が明らかになった際には、石垣市教育委員会市史編集課にて追加の資料調査を行う。8月には旧暦の7月15日に行われる「旧盆」に合わせて現地入りし、一日の様子を記録する。先行研究で調査した台湾の「中元節」と比較しながら、台湾系集落にみられるハレの日の空間の使われ方とコミュニティ、伝統習俗について調査する。8月後半には名蔵・嵩田集落入植前に居住していた台湾の彰化縣・台中縣の現地調査を行い、台湾で最初に作成された2万分の1の地形図である台灣堡圖を用いて地理環境の比較を行う。 9月には再度、現地に入り、前年度調査できなかった「土地公祭」に参加する。ハレの日の空間や聖域の使われ方、御嶽の位置づけを調査項目として掲げ、聞取りも行う。また、研究の目的に位置づけている生活のかたちについて、住まいの間取りや生活行為など現在の住まい方の調査を行い、住空間の分析を進めていく。入植当時の居住空間を聞取りによって再現(図面作成)する作業を同時進行で行い、過去と現在の住まいの変容を探る。 10月には、4月に研究会を行った研究者が開催する学際シンポジウムに聴講者として参加し、その後の研究交流会を予定している。さらに2月には海外関連調査として、同メンバーと合同で「台湾客家集落(台中市近郊)」の踏査を予定しており、中国や沖縄集落との比較研究会を行う。 11~2月にかけて研究のまとめを行い、3月には科研費報告書を作成する。本研究の成果は集落、生活、コミュニティの項目ごとに、関連の深い学会へ論文を投稿する予定である。
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