2013 Fiscal Year Annual Research Report
近代ヨーロッパ境域権力の比較史研究:ロレーヌ=エ=バール公権の領邦君主権を事例に
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25884006
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
帆北 智子 東北大学, 国際文化研究科, 専門研究員 (90713214)
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Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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Keywords | ロレーヌ=エ=バール公権 / フランス王権 / 神聖ローマ帝権 / 境域 / 領邦君主権 |
Research Abstract |
本研究は,初期近代のロレーヌ=エ=バール公権による「領邦君主権」の構築局面を,ヨーロッパの二大強権たるフランス王権および神聖ローマ帝権との関係において改めて捉え直そうとするものである。これにより,ロレーヌ=エ=バール公権の史的評価における「ネガティヴ」な偏りを相対化し,境域権力たるロレーヌ=エ=バール公権の歴史的特質にアプローチする。 申請時の研究計画にのっとり,平成25年度は主として以下の作業に取り組んだ。①領邦君主権に関するわが国の研究状況をまずは把握すべく,先行研究の収集を行った。耐震工事によって所属大学の図書館利用が大幅に制限されていたことから,収集作業のほとんどを国立国会図書館にておこなった。②11月中旬から12月中旬にかけての約1ヶ月,パリの国立文書館とナンシーのムルト=エ=モゼル県文書館において,史料の調査と収集をおこなった。パリには1週間ほど滞在し,フランス王権側が作成したロレーヌ関連の公文書にあたった。次いで,ナンシーに移動し,主として分類系列3F(ウィーン・コレクション)の調査に取り組んだ。結果,レオポルド1世期およびフランソワ3世期に徴収された人頭税,即位祝賀税などの税関連史料を入手することができた。また,ムルト=エ=モゼル県文書館での調査の合間にはナンシー市立図書館を訪問し,本研究にかかる刊行史料や,未公刊の学位論文を含むフランス本国の先行研究をできる限り収集した。帰国後は,以上の作業からえた資料の整理,読解,分析に集中し,本研究の予備的考察に該当する論文,および,研究計画の「基礎分析I」の成果に該当する論文をそれぞれまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本とフランスにおける先行研究の収集はおおよそ順調にすすんだが,一次史料の収集状況をみると,訴訟(裁判)関連の史料がまだ不足している。それにしても,現時点で入手しえた資料から二本の論文を成果として提出することができた。現在もすでに,複数の研究発表を予定しており,つぎなる論文投稿の目処も徐々にたちつつある。さらには,平成25年度にえられた成果によって,今後の作業方針の焦点がより絞られてきたことから,全体として,本研究はおおむね順調に進展しているものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度に引き続き,収集した資料の整理と分析をおこないつつ,今後は研究成果のアウトプットに比重を移していく。その第一歩として,「基礎分析I」でえた成果を6月と7月に開催される学会で発表し,「基礎分析II」の成果は9月以降の学会で発表していく。不足資料を補完すべく夏にはふたたび渡欧するが,できるだけ短期間の滞在におさえる予定である。また,ここでえられる資料は,冬以降の「研究総括」にむけて早急に分析する必要があるだろう。
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