2013 Fiscal Year Annual Research Report
グローバル化に晒されるルーマニア農村家族構造の変容に関する人類学的研究
Project/Area Number |
25884007
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
杉本 敦 東北大学, 文学研究科, 助教 (70712256)
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Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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Keywords | 文化人類学 / ルーマニア / 農村 |
Research Abstract |
本研究は、グローバル化に伴う産業化と商業化の中で伝統的農業が衰退しつつあるルーマニアにおいて、農村家族が直系家族による牧畜経営体ゴスポダリエの形態から、両親と全ての子ども夫婦を含む合同家族的なファミリエの形態へと移行しつつあることを検討することを目的とする。具体的には、トランシルヴァニア地方の一山村における財産相続と養老の変化についての一次資料の収集、分析を主な研究方法とする。 初年度に当たる平成25年度は、研究の土台となる基礎作業、すなわち文献資料の収集とフィールド調査による民族誌的データの収集を行った。平成25年11月には、ルーマニアのブカレストおよびブラショヴに滞在して、研究テーマに関わる書籍、雑誌論文、新聞記事を収集した。それにより、家族、扶養、相続といった諸問題の歴史と現在について全体的に把握することができた。 平成26年3月には、トランシルヴァニア地方の山村Fにおいて、聞き取り調査を行った。村内の7世帯を対象に、家屋の数、住民の居住状況、就業形態と家計の実態についての情報収集を行った。特にそれぞれの世帯が、どの時期にどのような家畜をどれだけ保有していたのか、現在それはどうなっているのか、家畜飼養を放棄した後の生活の変化について詳しく聞き取りを行った。これは、ルーマニア農村の家族構造とその変容を明らかにする上での重要な基礎資料となった。そこからは、伝統的な牧畜生活の放棄が土地相続と養老の均分化、すなわちすべてのキョウダイが等しく義務と権利を持つ状況を生み出していることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究の土台となる民族誌的データ、ルーマニア農村家族の世帯構成、財産相続、養老についての詳細な民族誌的データを収集するという初年度の目標は一定レベルまで達成することができた。偶発的にではあるが、入院した老父の介護を子どもたちがいかに行うか、またそれについての考えを直接観察できたのは貴重な成果であった。 ただし、各家屋敷ごとに順番に聞き取り調査を行い、各項目についてのデータ収集を行ったため、当初計画していた20世帯に及ばす、7世帯を対象とするに留まった。収集したデータの質という点では、十分に目標を達成したが、量に関してはやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に沿って、平成26年度には収集したデータの整理、分析を行う。平成26年8月から9月にかけての約1ヶ月間は、F村および近隣都市ブラショヴに滞在してフィールド調査を行う。昨年度の調査対象を含めて20世帯を対象とするが、事例の数を増やすことではなく、各世帯ごとにまとまった民族誌的データを収集することに重点を置く。 収集したデータを取りまとめ、日本文化人類学会および比較家族史学会での口頭発表、学会誌での論文発表を行う。
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