2013 Fiscal Year Annual Research Report
ストリームデータを利用したICTサービス実装のためのプライバシー要件の理論的考察
Project/Area Number |
25884009
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
川口 嘉奈子 千葉大学, 人文社会科学研究科(系), 人文社会科学研究科特別研究員 (10706906)
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Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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Keywords | プライバシー / 情報倫理学 / プライバシー・バイ・デザイン / ストリームデータ |
Research Abstract |
本研究の研究計画のうち、平成25年度実施分として明記した以下の2項目について研究を実施した。 1.日本における「プライバシー」概念の理論的考察:ストリームデータを利用するサービスを導入するためのプライバシー保護要件を明確にするために、次の(1)、(2)の観点から日本におけるプライバシーの理論的研究を行った。 (1) プライバシー理論の整理と分析および精緻化:本研究計画の達成のために、プライバシー概念の理論的研究を経た適切なプライバシー理論の構築は決定的に重要である。そこで、情報倫理分野における国内外の先行研究に提示されているプライバシーの理論を整理するとともに、2012年の論文で提示したプライバシーの理論を精緻化するための研究を行った(現在も継続中)。 (2) 日本のプライバシーに関わる法制度と実際的なプライバシー保護に必要な社会的枠組みの調査:日本における「プライバシー」保護への取り組みは今年度中に大きく変更されることが決定している。そこで注目されている「プライバシー・バイ・デザイン」という思想的枠組みに着目し、理論的分析を行った(現在も継続中)。 2.プライバシーにかかわる可能性のあるストリームデータの種類の特定:1の成果をもとに、ストリームデータの中からプライバシーに関わるストリームデータを分類した。プライバシーの個人・社会・文化に相対的な性質によって、プライバシーデータ・プライバシー情報の範囲が定まらないという本質的な問題は、法制度およびサービスポリシーの策定におる難問の一つとされてきた。本研究では、人間が行きて行くうえで重要な価値の保全を目的とするプライバシー理論を基礎に据えることで、プライバシーデータおよびプライバシー情報の範囲を外的に定めることはできず、プライバシー・バイ・デザインの理念のもとで個別的な対応を要件として加える必要があることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の主目的の一つである実際の社会設計に即したプライバシー理論の構築に関しては、文献研究による概況の理解が進んだ。プライバシー保護が、経済的利益等の他の社会的利益とのトレードオフにならない、人間にとって重要な価値を保護するものであるという「プライバシー・バイ・デザイン」の原理に則り、どこまでプライバシーを保護するべきかという倫理的論点をこれから詰めていくとともに、その原理の問題点を明らかにする作業の途上にある。そして、日本におけるプライバシー保護政策の基盤思想として採用される「プライバシー・バイ・デザイン」の理念を中心に据えた状況で実現されるプライバシーの理解、プライバシー・バイ・デザインの理論的な問題点を明らかにできつつある。プライバシー・バイ・デザインの1項目を実現する技術的要件の提案について、国際会議に共著論文を投稿中である。 また、ストリームデータ利用におけるプライバシー保護の特徴については,口頭発表および論文において基本的な部分を明らかにした。しかしながら、データ利用の新たな展開が今後も引き続き見込まれるため、25年度の研究計画は現時点である程度達成したものの、社会状況の変化に応じて引き続き研究を継続する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
26年度も本研究の当初の研究計画に沿って研究を進める予定である。ただし、2014年半ばに発表が予定されているプライバシー保護方策の新展開と、近年相次いだ欧米のプライバシー保護方針の変更を受けて、日本においてもますますプライバシー保護に注目が集まることは必至である。そのため、基本的にはプライバシー理論の構築を検討しながらも、最新の状況をフォローし、変化に応じて柔軟に研究計画をマイナーチェンジしたいと考えている。具体的には、日本におけるプライバシー保護方針の基盤として注目されている「プライバシー・バイ・デザイン」の理念を社会に実現するにあたっての問題点を明らかにすることを最大の目標にする。
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