2013 Fiscal Year Annual Research Report
18-20世紀におけるインド西部の社会経済変化 ‐プネー県インダプール郡を事例に
Project/Area Number |
25884015
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小川 道大 東京大学, 人文社会系研究科, 研究員 (30712567)
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Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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Keywords | 社会経済史 / インド / マラーター / ボンベイ / 鉄道 / 農村 |
Research Abstract |
本事業は18世紀後半から20世紀初頭という長期を扱うため、対象時期を1751-1830年、1831-70年、1871-1914年の3つの期間に分け、3つの研究課題を同時に着手することとした。 第1区分の1751-1830年に関しては、2013年9月に学位を取得した博士号請求論文"Socio-Economic Study of Indapur Pargana (1761-1828)"で主に扱った問題であり、"Internal Structure of Qasba (town) in the Maratha Kingdom" (International Journal of South Asian Studiesに掲載内定)を執筆し、第1区分の村落構造をまとめた。また2013年11月に台湾で発表した"A Study of the Local Economy by use of English and Indian Documents in the Early 19th Century India"と同年12月にインドで発表した“Trade Network of a Pargana in Western India"で、前英領期から植民地期への社会経済の連続を考察し、第2区分の1831-70年の研究とのつながりを見出した。これまで、植民地期と前植民地期で分けて議論されていた、ミクロのレベルでインドの社会経済を接続させることに成功した。 史資料収集は、第2区分(1831-70)の時期を中心に行った。インド・ムンバイのムンバイ文書館、ロンドンの大英図書館での調査の結果、鉄道の敷設がインド農村を、港湾都市ボンベイを通じて世界経済をつなぐ重要な役割を果たしていたことが明らかになった。申請時に想定していなかった新たな発見で、鉄道資料を中心に、第2区分の史資料収集を終えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題を、課題申請書類項目の「研究経費の妥当性・必要性」の中で挙げた、「インド・イギリスでの文書館調査」、「国際学会での発表・英文論文執筆」「インダプール郡での現地調査」という、3つの点から評価し、以下のような理由で「おおむね順調に進展している」と自己判断した。 第1点の「インド・イギリスの文書館調査」に関しては、2012年12月-2013年1月に、インド・マハーラーシュトラ州の、ムンバイおよびプネー文書館で史資料収集をし、同年2月にはロンドンの大英図書館で史資料収集を行った。デリーの国立公文書館で調査はできなかったものの、マルチ・アーカイブスの手法を取り、効率的に調査を行うことができた。インドでの史資料調査の中で、鉄道資料の重要性が明らかになり、ムンバイ文書館および大英図書館では、鉄道資料を集中的に集めた。これは申請時には想定していなかったことであり、文書館調査に関しては「当初の計画以上に進展している」と評価する。 第2点の「国際学会での発表、英文論文の執筆」は、上記の研究実績の概要で記したように、申請時の計画通り、台湾で国際会議に参加し、申請時の計画にはなかったが、インド・デリーのジャワハルラルネルー大学での国際シンポジウムInternational Conference on Patterns of Social and Economic Change in Colonial and Independent Indiaで発表する機会を得た。英文論文を3本投稿し、「おおむね順調に進呈している」。 第3点の「インダプール郡での現地調査」は、現地調査を行い、水利用の現状を把握したものの、地籍図のデジタル化は予想以上に許可を取ることが困難で始まっておらず、データのGIS化も困難である。そのため調査は「やや遅れている」。 これを総合して「おおむね順調」と評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
第1年目の調査では、本研究課題の第3区分の期間(1871-1914)の現地での史資料収集と、データのGIS化という問題が残った。以下の方法でこの課題を解決し、調査を完成させる。 第3区分の期間の史資料収集に関しては、「現在までの達成度」で示したように、多くの公刊史資料をすでにデジタル・アーカイブスを用いて、収集済みである。現地に残されたより詳細かつ未公刊の資料を、インドのムンバイ文書館で収集する予定である。すでに公刊史資料は収集済みであるから、これらをもとにどのような史料が必要かを、ムンバイでの調査前に検証し、一度の史資料調査で、本課題達成に必要なデータを入手する。 現地の地籍図のデジタル化は相当困難であるといわざる負えない。しかし、現時点の地籍図がインターネット上で公開されており、ここから現地の土地利用の歴史に関してヒントを得られる。また従来のArc GISよりも平易な、Quantum GISという新たな地理情報システム(GIS)のソフトが登場し、インターネット上で無料でダウンロードできる。これを用いて、これまでよりもより効率的にデータを地図に結びつけ、本研究課題を可視化することとする。 データのGIS化を進め、2015年1月タイのバンコクで行われるアジア歴史地理情報学会国際会議で、本課題の成果を国際的に発信する。『史学雑誌』や『社会経済史学』など、複数の学術誌に本研究課題の成果を投稿しながら、18-20世紀のインド西部の社会経済の長期的な変動を明らかにしていく。
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