2014 Fiscal Year Annual Research Report
正木直彦の人的ネットワークと美術鑑賞大衆化の研究―新出の正木直彦資料を中心に
Project/Area Number |
25884021
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
太田 智己 東京藝術大学, 美術学部, 助手 (90706714)
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Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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Keywords | 美術史 / 日本近代史 / 制度論 / メディア / 美術教育 / 東京美術学校 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、新出の「正木直彦資料」(東京芸術大学大学美術館蔵)を中心に史料調査を行ない、正木が築いた1.人的ネットワークを解明することで、正木が2.美術鑑賞の大衆化に果たした役割を明らかにすることである。 本年度はまず、前者の1.人的ネットワークの解明のために、前年度から継続して、関係人物索引の作成を行なった。そして正木の著書『十三松堂日記』と『回顧七十年』の、全頁を対象とした人物索引を完成させた。この人物索引は、本研究以外にも大きな貢献ができると考え、他研究者も参照できるよう、WEB公開を試みた。とくに『十三松堂日記』は、既刊の刊本に付された人物索引が、著しい不備のため実用に耐えない。本研究が完成させた人物索引は、正木を通じた人物情報調査の環境整備という点で、日本近代美術史研究全般にも貢献できると考える。 そのうえで本年度は、上述の索引から判明する正木の人的ネットワークと、「正木直彦資料」、「財産税の美術に及ぼす影響」などの正木の著作から、正木が2.美術鑑賞の大衆化に果たした役割を、具体的に考察した。明らかになったのは、正木が当時のメディア界の諸人物と築いた関係をもとに、出版・新聞・ラジオなどの各メディアを意識的に利用することで、美術鑑賞の機会を大衆社会へ開くためのシステムを、構想・構築・実現させようとしたことである。とりわけ本年度は、これについて次の2点を重点的に検証できた。第1に、正木の美術鑑賞大衆化のヴィジョンが、円本美術全集、ラジオの美術番組、サブカルチャーの美術史物語、古美術観光、デパートの古美術展など、当時の美術鑑賞大衆化のための諸制度の成熟と、同期しつつ構築されていたことである。くわえて第2に、商業出版社からの円本美術全集の監修依頼や、観光行政での委員としての登用など、それらの諸制度の側からも、正木という人物が必要とされていたことも検証できた。
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Research Progress Status |
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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