2013 Fiscal Year Annual Research Report
20世紀アメリカ合衆国における「長い公民権運動」の歴史学的研究
Project/Area Number |
25884024
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
武井 寛 一橋大学, 大学院社会学研究科, 特任講師(ジュニアフェロー) (10707368)
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Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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Keywords | 人種 / 公民権運動 / 都市史 / 移民 / エスニシティ / ジェンダー / 住宅政策 |
Research Abstract |
2年間の研究プロジェクトの1年目にあたる平成25年度は、研究遂行上、必須となるアメリカの主要な公民権運動研究、都市史、移民史に関する史料収集を行った。なかでも平成25年度は、1941年にフランクリン・ローズヴェルト大統領の命令のもと、軍需産業での雇用差別を禁じて創設された団体の資料である公正雇用実施委員会(以下、FEPCと略記)のマイクロフィルム(9リール)の印刷・PDF化を集中的に行った。本記録は膨大な史料のため、全体の約三分の一の史料分析を行い、第二次世界大戦期の黒人の雇用や住宅など様々な問題に対する連邦政府の政策を検討した。 また、第二次世界大戦後の黒人の社会運動を分析する際に黒人退役軍人に注目し、住宅の入居をめぐる人種対立を中心に検討した。この黒人退役軍人をテーマにした研究は、平成25年6月に開催された一橋大学国際セミナーにおいて、1940年代のシカゴにおける2つの黒人退役軍人の公営住宅への入居をめぐって起きた人種騒動の分析に関する発表を英語で行った。本発表に対しては、黒人史と都市史を融合する可能性の重要性や、公正な住宅を求める黒人の運動を公民権運動として捉えることの意義について、セミナー参加者から大変建設的なコメントをいただいた。本発表はその後、英語論文として上智大学アメリカ・カナダ研究所が発行するJournal of American and Canadian Studiesに掲載された。さらに平成25年12月には、日本アメリカ史学会において黒人史の第一人者の上杉忍氏の新書に関するコメントを行った。このように、平成25年度は資料収集及び分析、学会報告と論文執筆と計画通りに研究を行えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
主要文献の収集、マイクロフィルムの印刷・データ化を予定通り行えたので、2年目の平成26年度の本プロジェクトに向けた重要な足がかりはできたと考えられる。研究成果という面では、学会報告及びその内容の投稿論文への掲載というかたちで研究成果を発表できた。以上のように、平成25年度の研究はおおむね順調に進んだ。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度の主要な研究方針は、これまで注目してきたシカゴの運動を、他の都市との比較の視座から再検討するために、西部の大都市ロサンゼルスとサンフランシスコに焦点を絞って比較検討する。平成26年度の研究は、前半にFEPCのマイクロフィルムを引き続き分析する。夏にはカリフォルニア大学バークレー校バンクロフト図書館のコレクションのキャサリン・バウワー・ワースター・ペーパーズを中心に史料収集を行う。平成26年度の後半には、FEPCの記録とアメリカで収集した一次史料を中心に用いて、20世紀中葉のマイノリティに対するカリフォルニア州の住宅政策と、それに対する黒人の活動を考察する予定である。その上で、これまでの研究で注目してきたシカゴと比較検討し、本研究をまとめる予定である。
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Research Products
(2 results)