2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25884047
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
佐々木 守俊 岡山大学, 社会文化科学研究科, 准教授 (00713885)
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Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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Keywords | 印仏・摺仏 / 地蔵菩薩像 / 像内納入 / 大量造像 / 仏教説話 |
Research Abstract |
25年度は、印仏・摺仏を像内納入する仏像と密接な関係を持つと考えられる、京都・寂光院地蔵菩薩像の像内納入品、および奈良・福智院地蔵菩薩像の実見をおこなった。これらはいずれも「千体地蔵」として造立されたとみなされる作例である。寂光院像は多岐にわたる納入品で知られ、特に膨大な地蔵菩薩の小像の存在は際立っており、鎌倉時代における多数尊の造像およびその像内納入という信仰形態の好例である。また、福地院像は多数の地蔵菩薩の小像を光背に多数取り付けており、本体と光背の総体で千体地蔵であることをあらわす。寂光院像のように多数尊を像内納入するのではないが、制作年代の判明する基準的作例であり、地蔵信仰の中心地である奈良に所在することからも重要性が認められ、鎌倉時代における地蔵菩薩の大量造像という問題を考察するうえでは看過できない。このほか、神奈川・元箱根地蔵菩薩像を中心とする摩崖仏群を実見し、地蔵信仰と「場」の関連性を考察する準備をおこなった。 26年度は、印仏を納入する地蔵菩薩像の実査を進め、造形的特徴とともに造立時の願文の内容にも検討を加えることで、制作背景をより具体的に捉え直してゆきたい。 史料研究では、金沢県立金沢文庫において『漢家類聚往生伝』の影印本の調査をおこなった。同書は遼代説話をベースとする鎌倉時代の往生伝で、仏教版画の制作の場について語る説話を含む。今回は翻刻本と影印本を対照し、特に版画制作に関する「摸」「摺」といった語の使用箇所に注目しながら字句を確認した。26年度は、まだ未見の説話集にも視野を広げ、印仏・摺仏の制作と仏像への納入を語る説話を収集して内容の検証を進め、実作例を対象とする研究の成果と合わせて得られた知見を公表したいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
複数の研究プロジェクトや調査を並行して進めたため、本研究に割ける時間が減少した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画を見直し、未見の彫刻作品の調査を速やかにおこなうとともに、説話の収集と検証を進めたい。
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