2013 Fiscal Year Annual Research Report
オリエントの共謀:19世紀末に始まる人類学博覧会とその記憶
Project/Area Number |
25884071
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
山本 まゆみ 早稲田大学, 文学学術院, 客員准教授 (60709400)
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Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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Keywords | 人類学 / オリエンタリズム / 万国博覧会 / 資本主義 / 大衆化 / 記憶 / ポスト・コロニアル研究 / 東洋史 |
Research Abstract |
本研究は、1889年パリ万国博覧会を機に、各国の博覧会に飛び火した「人類学学説」の具現化としての人間の展示に関して、当時の史資料を精査することにより再考察することを主たる目的としている。研究目的の根底には、昨今の「人間展示」に関わる万博研究に儘見られる、ほぼ2項率に近いオリエンタリズム的解釈が内包する、簡素化した理解の危険性として、当時の被植民地あるいは展示された人々が属した社会の人種や階級の疎外と摩擦を隠ぺいしてしまうのではないかという人類学では定説の問題提起から出発している。また、単純化された理解の織りなす、記憶の政治性も検証することを目的としている。 平成25年度の研究では、国立国会図書館、早稲田大学中央図書館といった国内調査から、日本の博覧会で人間展示として当時から「問題」になっていた大阪内国勧業博覧会傍に設置した「学術人類館」の企画者でありパリ万国博覧会を直に体験しながら、その展示方法を批判した坪井正五郎の学術的背景を知るべき資料を収集調査した。坪井のパリ万博への批判は、「西洋人ではない」彼の背景に起因していると仮説を立てていたが、坪井の展示の方法および当時の彼の論考から、坪井は当時一世風靡していた「社会・文化進化論」とは異なり、「文化伝播主義」的考えをすでに確立しつつあったのではないかと理解できた。一方、坪井の多様な出版物から見え隠れする人類学の普及の方法は、西洋の人類学者が万国博覧会を通じて大衆に人類学を普及させていった方法に類似していたことも解明することができた。また、オランダ国立図書館を中心とした海外調査を通じ、当時そして現在万国博覧会を解釈する人類学者や歴史研究者の思惑とは大きく異なり「人間の展示」に秘めた商業主義的理解の必要性見出すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国内調査は、順調に進んでいる一方、海外調査に関しては、効率的研究を考え多言語を理解している研究補助者との打ち合わせの都合、オランダ図書館の調査から始めた。このことで、万国博覧会の商業主義的な面を着目する必要性を考えるようになったことは、研究の進展具合に多少なりとも影響した。さらに、研究スタート支援補助金の開始時期が、他の科研費と異なり約半年遅れていることを考慮に入れず、研究計画を設定してしまったため、予定に無理があったことも原因と考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究は、1889年のパリ万国博覧会とその時代の資料、その後万博の展示方法をパリに倣った大阪内国勧業博覧会、アメリカシカゴ、セントルイス万国博覧会とその時代の社会に関する資料、特に人類学という学問がどのように社会に関わっていたかという資料を調査収集する。平成25年度の調査を受けて、博覧会の商業主義的な面、また植民地政府に迎合したと言われる人類学が大衆化を試みたのではないかという修正した仮説をたて、調査をすすめる。調査は、単に博覧会関係の資料調査のみならず、当時の娯楽や一般雑誌に至る広範囲の資料を収集するようになる。夏休みまでは、国内調査に集中し、その結果をもとに海外調査を行うことを計画している。
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