2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25884076
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
|
Research Institution | Otani University |
Principal Investigator |
木島 菜菜子 大谷大学, 文学部, 助教 (90710418)
|
Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
|
Keywords | 英文学 / ディケンズ / 絵画 |
Research Abstract |
本研究は、ディケンズの文学と絵画との相関関係を実証的に示すことを目的としている。今年度は絵画がディケンズの想像力に及ぼした影響、及び、ディケンズの作品が画家や絵画作品に及ぼした影響を分析し、主に宗教画と風景画との関係、また同時代の社会派リアリズム絵画との関係に焦点をあてて研究をすすめ、以下の3点の研究成果をあげた。 1. ディケンズの書いた絵画批評として最もよく知られるジョン・エヴァレット・ミレイ作『両親の家のキリスト』に関する文章と、小説『ドンビー父子』や『互いの友』の中に登場するキリストを描いた絵画の描写とを比較検討し、またそれをディケンズの『キリストの生涯』におけるキリストの表現と照らし合わせることで、ディケンズの宗教画に対する思いを分析した。なお、本研究において『互いの友』の中のキリストの図像がベンジャミン・ウエストによる"Christ Blessing Little Children"であることを同定した。これらの研究成果は、2013年12月に京都大学に提出された博士論文、及び3月に開催された第38回ヴィクトリア朝研究会での口頭発表で発表した。 2. ディケンズの作品が同時代の画家W. P. フリスに及ぼした影響とその主題やアプローチの社会派リアリズム絵画との共通性について論じた。この研究成果は2014年6月発行の『西洋文学研究』第34号に掲載される予定である。 3. 小説『デイヴィッド・コパフィールド』における嵐の場面と移民船が夕日の中遠ざかっていく場面とを、前者を特に高く評価したジョン・ラスキンの言葉を手がかりに、J. M W. ターナーの海の風景画と比較し、それらの場面の視覚的効果と小説の中における役割を論じた。この研究成果は、2014年5月の第86回日本英文学会での口頭発表で発表する予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していたとおり、ディケンズと宗教画との関係、同時代の画家への影響や社会派リアリズムへの影響について、また、風景画との関係についても、その一端であるターナーとの関係について成果をあげることができたため。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度は、次の2点に焦点をあてて研究をすすめる。 1. ディケンズと風景画との関係をより多面的に考察する。特にディケンズの風景の見方に関して、ピクチャレスク美学の影響について、またオランダとイギリスの風景画からの影響について調査する。 2. ディケンズと版画の関係について明らかにする。特に、ホガース及びホルバインの作品からの影響について調査する。
|