2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25884077
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
村上 真樹 同志社大学, 高等研究教育機構, 助手 (50707164)
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Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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Keywords | 美学 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に引き続き、「仮象の美学」構築のための比較研究を行った。本研究のねらいは、ヴァルター・ベンヤミンの「仮象(Schein)」概念を他の美学史上の言説と比較することを通して、実体を伴わない表面的なイメージとしての仮象がこれまでどのようにとらえられてきたのかを明らかにすることであった。 そこから導き出されたのは次の三点である。(1)ベンヤミンは、ゲーテやシラーによる古典主義的仮象概念、あるいはまたゾルガー、ヘーゲル、シェリングによる観念論的仮象概念に対しては批判的であり、美と道徳・真理との関係を切断することによる仮象の価値の切り下げを試みている。そのような姿勢は、ベンヤミンの後期思想における「アウラの凋落」の問題へとつながってゆくものである。(2)ベンヤミンは、ニーチェの言う純粋な見せかけとしての仮象を、仮象としてではなくアレゴリー(寓意)としてとらえる。このことは後期ベンヤミンにおける写真論・映画論を考える上での重要な基盤となる。(3)ベンヤミンは、カントによって定式化された「崇高」の概念を、仮象を切り裂いて現れる一瞬の停止として再定義し、それを「美」という価値観からの解放ととらえる。このことは後期ベンヤミンの革命概念をも規定するものであり、そこでもまた時間の連続性からの解放が企図されている。 以上のことを踏まえながら、本研究はベンヤミンの美学が「仮象」の概念を軸として美や芸術に対するメディア論的アプローチを図るものであったと結論づける。それはボードリヤールのシミュラークル概念、そしてマクルーハンのメディア論とも深く関わるものであり、急速な変貌を遂げつつある現代のメディア環境を考える上でも重要な基盤を提供するものであると言える。 本研究の成果は、『美の中断――ベンヤミンによる仮象批判』(2014年9月10日発行、晃洋書房)と題して書籍のかたちで刊行されている。
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Research Progress Status |
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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