2013 Fiscal Year Annual Research Report
地理的・歴史的変種の対照による日本語の敬語の運用とその変化に関する研究
Project/Area Number |
25884082
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
森 勇太 関西大学, 文学部, 助教 (90709073)
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Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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Keywords | 敬語 / 授受表現 / 発話行為 |
Research Abstract |
本研究は,発話行為場面における敬語運用の変化を,授受表現や他の発話行為(命令表現,申し出表現)に関わる要素と対照させることによって明らかにすることを目的としている。本年度は主に[1]命令表現の歴史として,否定疑問形の東西差の形成を明らかにすること,[2]申し出表現の方言での運用について,「くれる」の上位者への授与を表す運用がどのように成立したか,明らかにすること,の2点の課題について取り組んだ。 [1]否定疑問形の東西差の形成について,本年度は近世後期・近代の上方語資料のコーパス化作業を行った。そのうえで,江戸語に見られる否定疑問形が上方由来の表現であり,江戸期の「共通語」として用いられていて,市井の江戸語では用いられることがなかったということを明らかにし,論文を執筆した。これは来年度に刊行予定の『日本語文法史研究』2号(ひつじ書房)に掲載される予定である。 [2]「くれる」の上位者への授与,については鹿児島県薩摩川内市,いちき串木野市,日置市,南さつま市において調査を行った。「くれる」の上位者への運用は,当地域内の地域差として現れており,来年度以降に研究を継続することとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
方言の命令表現については,現地調査のための予備的な調査が完了している。また,命令表現の歴史について,コーパス化作業は着実に進んでおり,また,学会発表はこの期間内にはできなかったものの,論文の執筆は完了している。また申し出表現の運用については,当初計画していたよりも多くの話者の調査ができており,順調に進展している。 このため,総合的に見ると,おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は,方言の命令表現について,予定通り調査をおこなう。また,方言の申し出表現については,追加調査を行うとともに,当地の談話資料を用いて伝統方言との比較を行う予定である。
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