2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25885002
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
久永 忠 北海道大学, 経済学研究科(研究院), 助教 (50452305)
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Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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Keywords | 経済政策 / 経済理論 / 国際貿易 |
Research Abstract |
① 状態遷移の追跡による比較優位の持続性の特徴抽出 OECD諸国を中心に各国各産業の顕示比較優位指数(RCA指数)を算出した.RCA指数は,比較優位の度合いを測るための有力な指標であり,国際貿易研究では主要な指標として普及している.OECD加盟30カ国(2010年)に,中国(本土),中国(香港),シンガポールの3カ国・地域を加えて対象国とした.また,貿易の産業分類については,財貨貿易を標準国際貿易分類に基づく8項目,サービス貿易を国際収支統計の分類に基づく9項目から構成して対象産業とした.2010年を最新とする統計データに基づいて上記の対象国・産業についてRCA指数を算出して分析を進めた.主な分析結果として,例えば,日本については2000年のデータと比較して,サービス貿易において建設サービスおよび知的財産関連取引が継続的に高いRCA値を示していることを明らかにした. ② 動的区間設定による構造変化速度の比較と特徴抽出 前項で説明したRCAデータに基づいて比較優位構造の変化速度を分析した.構造変化の速度は,RCA値がある状態に留まっている時間から計測した.大まかな特徴として,初期時点におけるRCA値に応じて高い方から低い方へとグループ化した場合,RCA値が高いグループは低いグループと比べて構造変化の速度が遅いことを明らかにした. ③ モデル特定化関数の比較検討およびマクロ経済変数の選抜 マクロ経済変数の選抜に先立って,独占的競争型リカードモデルに基づいてRCAの理論的基礎を分析した.モデルの基本的な変数である労働量の配分状況を,部門内の代替弾力性および各部門の技術指標変数その他パラメータ・変数に適当な値を設定することによって,閉鎖経済から開放経済への移行過程において必ずしも経済的厚生が上昇するとは限らないことを明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画にしたがって研究課題を推進することができた.作業の一部に遅延が発生したが,他の作業を進めたことによって新たな知見が得られ,それらを活用して遅延作業を挽回することができた.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は次のテーマにしたがって,①状態遷移の追跡による比較優位の持続性・可動性の特徴抽出,②顕示比較優位指数の独占的競争型リカードモデルによる理論的基礎付けを中心に研究を進めていく. ①については,分析対象国・地域としているOECD諸国その他地域の財貨・サービス貿易に関するデータを取得して、統計解析アプリケーション用のデータセットに加工する。財貨貿易については、国際連合貿易開発会議(UNCTAD)の公開データベースからデータを取得する。また、サービス貿易については、国際通貨基金(IMF)の国際収支統計からデータを取得する。データセットは、年次で各国・地域の産業別のデータを追跡できるように加工する。 ②については,独占的競争型リカードモデルを理論的基礎としてRCA指数を国際貿易モデルに組み込んで、労働投入量・賃金率とRCA指数の変化、RCA指数と経済的厚生の変化を分析する。まず、理論モデルを用いて変数と指数の関係性を分析する。次に、数値解析によって前述の関係性を実証する。また、上記の実施項目で作成するデータセットを用いて計量分析を実施して現実的妥当性を検証する。 また,これまでに得られている結果および上記実施項目から得られる結果を取りまとめ、学会・研究会その他学術的会合において発表する。
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