2013 Fiscal Year Annual Research Report
製品の使用状況を考慮した経験価値マーケティング:認知的視点からの検討
Project/Area Number |
25885006
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Research Institution | Otaru University of Commerce |
Principal Investigator |
鈴木 和宏 小樽商科大学, 商学部, 准教授 (10708366)
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Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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Keywords | 経験価値 / ブランド・エクスペリエンス / 使用状況 |
Research Abstract |
本年度の研究目的は、使用状況を組み込んだブランド・エクスペリエンス・モデルの一般化を検討することでした。このモデルは製品関与度が使用状況を媒介してブランド・エクスペリエンス(BE)に影響を与えることを示したモデルで、2012年10月に筆者がビール系飲料市場におけるブランドAを対象に、20代30代男性を被験者とした調査により検証されたモデルでした。このように、性別や年齢などの消費者特性を統制し、単一市場・単一ブランドにおいて検証したモデルであるため、これを他の消費者特性や他ブランドに展開し一般化できるかは検討しておりませんでした。従って、本年度はまず当モデルの一般化を検討すべく、対象ブランドと対象被験者を拡大して調査を行いました。 当調査を行うため、2013年度は先行研究のレビューを進めるとともに、各学会や研究会にて当モデルや調査設計に関する専門家の意見収集を行いました。これらの検討の結果を反映し、2014年3月に調査会社を通じてweb調査を実施しました。対象市場はビール系飲料市場とアパレル市場で、それぞれ3ブランドずつ測定しました。被験者は男女計824名で、測定項目はBE、製品関与度、当該製品について関与度が高まる使用状況での使用傾向、ブランド・ロイヤルティとしました。分析は共分散構造分析を採用しました。 その結果、ビール系飲料市場については、一部のブランドは適合度が若干低いものの棄却できる水準ではなく、ブランド間の一般化は概ね支持されました。一方でアパレル市場は、2ブランドについてはビール系飲料市場と同様の結果となりました。しかし、1つのブランドについては関与度が使用状況を介してBEに対して影響を与えていませんでした。このブランドは廉価なブランドであるため、BEの測定対象として不適当であったと思われます。 以上より、当モデルのある程度の一般化は妥当であると判断しました。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2013年度に予定していたプロセスが終了しているためです。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は以下の3つについて検討を行いたいと考えています。優先順位としてはIとIIを優先的に研究資源を配分し完了させ、その上でIIIの遂行に問題が無ければ適宜IIIへ進みます。 I.使用状況の評価によるブランド・エクスペリエンスへの影響に関する検証(5~6月):昨年度の調査では、客観的使用状況に加え、使用状況の評価(主観的使用状況)についても測定を行いました。昨年度の検証では、既存モデルの一般化を検討したため、客観的使用状況をモデルに組み込み検証を行いましたが、このデータから主観的使用状況との関連についても検証したいと考えています。 II.使用状況における自己関連性の規定要因の検討(6月~10月):前年度の調査結果から、使用状況を組み込んだブランド・エクスペリエンス・モデルの一般化については、ある程度可能であると判断しました。ただし、なぜその使用状況がそのブランドのBEを高めるのかは十分に考察を行うことができませんでした。既存研究からは、製品関与度が高い使用状況での製品の使用がBEに影響を与えていると考えられます。すなわち、使用状況より形成された製品に対する自己関連性がBEの形成に影響を与えていると考えられます。しかし、製品やブランドにより自己関連性を高める使用状況は当然異なると考えられます。この規定要因を究明することで、如何なる使用状況での製品の使用を促し、どのような使用状況と自社製品を結びつけるべきかが明らかとなると思われます。 III.メーカーが意図する使用状況での使用を流すコミュニケーションの在り方の検討(9~1月):IIで判明した使用状況を如何にメーカーは間接的に促進・統制するかがマーケティング戦略上重要な要素となります。状況比較広告に関する研究(Wansink and Ray, 1996)を参考にしつつ、研究を進める予定です。 以上をまとめて2~3月に本助成研究の結論を導出します。
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