2013 Fiscal Year Annual Research Report
階層・ジェンダーによる教育達成格差の心理社会的メカニズムに関する研究
Project/Area Number |
25885007
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
鳶島 修治 東北大学, 教育学研究科(研究院), 博士研究員 (30708350)
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Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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Keywords | 教育社会学 / 教育機会の不平等 / 社会階層 / ジェンダー |
Research Abstract |
本研究は、出身階層やジェンダーによる教育達成格差が生じる心理社会的メカニズムの解明を目的としている。本年度は、関連領域の文献レビューを進めるとともに、国際学力調査PISA(Programme for International Student Assessment)やTIMSS(Trends in International Mathematics and Science Study)、および「学力実態調査」(ベネッセコーポレーション)の公開データの二次分析を中心に研究を進めた。主な研究成果は下記のとおりである。 1.PISA2003の日本調査データを使用し、高校生の教育期待に対する性別と出身階層の影響について、学業的自己概念(academic self-concept)や学業的自己効力感(academic self-efficacy)による媒介に着目した分析を行った。分析の結果、教育期待に対する性別と出身階層の影響は数学自己効力感(math self-efficacy)によって部分的に媒介されていることが明らかになった。この知見は教育達成の男女間格差・階層間格差が生み出されるメカニズムの解明に寄与するものである。 2.PISA2003の日本調査データを使用し、学業的自己概念に対する学校平均学力の効果――いわゆる「井の中の蛙効果(big-fish-little-pond effect)」――についてマルチレベル分析による検討を行った。分析の結果、学校平均学力は学業的自己概念に対して負の直接効果をもつと同時に、学校の地位に関する生徒の認識を媒介した正の間接効果をもつこと、前者は後者に比べてはるかに大きく、結果として学業的自己概念に対する学校平均学力のnet effectは負の値をとることが示された。 このほか、TIMSSの日本調査データや「学力実態調査」のデータを用いて、中学生の主観的能力と教育期待/教育アスピレーションの関連についての分析に着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画どおり文献レビューとPISAデータ等の二次分析を進めることができた。本年度の主要な研究成果についてはすでに論文を執筆・投稿している。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度も、当初の計画どおり、PISAやTIMSS等の学力調査の公開データを用いた二次分析を中心に研究を進める。ただし、研究を進めていく中で二次分析の限界も明らかになってきたため、当初の計画を一部変更し、公開データの二次分析を補う形で、小規模なWEB調査を独自に実施する予定である。
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