2013 Fiscal Year Annual Research Report
現代社会における都市住宅の動向とその変化の方向性に関する研究
Project/Area Number |
25885022
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山本 理奈 東京大学, 総合文化研究科, 学術研究員 (50708500)
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Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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Keywords | 住宅 / 都市 / 都市・住宅政策 / 居住福祉 / 快適性 / 消費社会 / メディア / 広告 |
Research Abstract |
現在、東京を中心に全国で見受けられる超高層マンションの大量供給という現象は、都市における人びとの住宅需要を示す最先端の現象であり、都市住宅の動向やその変化の方向性を兆候的に示していると考えられる。本研究の課題は、こうした超高層マンションの広告表現やモデルルームの分析を通して、どのような居住空間が人びとに望ましいものとして了解されているのかを分析し、都市・住宅政策を考えるうえで基礎となる知見を提供することにある。 本年度はこの課題を遂行するにあたり、1.東京における超高層マンションの「現状分析」、2.東京とその他の大都市との「比較分析」という2つの側面から調査を行った。具体的には、モデルルームでの参与観察、資料調査(分譲パンフレット・図面集・物件webサイト)、現地物件視察調査などを通して、物件名、立地、販売価格、間取り、専有面積、階数、総戸数、竣工年などについて調査を行った。そしてその成果の一部を、学会報告、著書、共著論文においてそれぞれ発表した。 本年度の研究成果により、東京や大阪などの大都市圏地域と沖縄などのリゾート型の観光都市地域では、広告表現の重点の置き方に差異のあることがわかった。ただし、こうした国内における地域差は限定的なものにとどまり、むしろ主要な語りのコードは地域を超えて共有されていることが明らかとなった。これらの点は、都市における商品住宅のリノベーションや、今後の中古市場の活性化を検討するために、参照すべき重要な知見になると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の実施計画では、東京都を分析の準拠点として定め、まず、1.東京の都心部を中心とする超高層マンションの調査を行い、そのうえで、2.国内外の大都市との比較調査を行うことを予定していた。 まず、東京都の調査に関しては、供給量の歴史的推移、立地の分布の推移など「通時的な変化」を把握する作業がほぼ終了した。また、供給量が突出している都心湾岸4区における「共時的な動向」を把握する作業についても、今年度分譲中の物件については終了した。つぎに、国内外の大都市との比較調査に関しては、調査対象物件の販売スケジュールとの関係から、那覇市については前倒しで調査を実施した。 以上より、ほぼ計画通り研究は実施されており、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の都市・住宅政策を考えるうえで最も重要なことは、戦後、都市部において大量に供給された膨大な住宅の「ストック」を、どのように有効活用するかである。現在、少子高齢化に伴う人口や世帯の減少が、将来、大量の「空き家」を発生させることが懸念されており、既存の住宅ストックをいかに活用するかは、都市・住宅政策上の重要な課題となっている。 こうした現状をふまえたうえで、都市における商品住宅のリノベーションや中古市場の活性化を検討するために、まず必要となるのは、人びとの住宅に対する願望や需要を正確に把握することである。とくに高齢者の居住ニーズの把握は、予測される都市の急激な高齢化に対応するためにも重要な課題となる。近年検討されている地域包括ケアシステムの基礎となるのは住宅の問題であり、都市住宅の変化の方向性を考えるうえで、高齢者の居住福祉の問題を見据えながら分析を行う必要がある。
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