2013 Fiscal Year Annual Research Report
国連安全保障理事会による「許可」:例外・逸脱・適用除外機能の批判的検討
Project/Area Number |
25885031
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
佐藤 量介 一橋大学, 大学院法学研究科, 特任講師(ジュニアフェロー) (10707342)
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Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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Keywords | 国際法学 |
Research Abstract |
本研究は、国連安全保障理事会が、国連憲章第7章に基づき加盟国に一定の行動を「許可する(authorizes)」行為が、憲章の諸規定に対する例外、逸脱又は適用除外(以下、「例外設定等」)を生じさせていると思われる実態を、国際組織法その他法理論から批判的に検証することを目的とするものであり、平成25年度は、安全保障理事会の解釈権限に着目した文献調査を実施した。 まず、明文規定はないものの、安保理自身にそうした解釈権限が存在するかどうかについての問題は「黙示の権限」の法理として扱われるところ、この問題に関する有益な文献を幾つか収集できた(例えば、Engstrom, V., Constructing the Powers of International Institutions (Martinus Nijhoff Publishers, Leiden, 2012)。 次に、「許可」という実行が、条約法上、国連憲章の適用につき「事後に生じた慣行」として扱われるものであるところ、この問題に関する有益な文献を幾つか収集できた(例えば、Nolte, G. (ed), Treaties and Subsequent Practice (Oxford University Press, Oxford, 2013)。 そして、安保理が「許可」決議を出すようになった背景が、競合する規範間の衝突を回避するための行為であることに鑑み、規範衝突の問題を扱った国連国際法委員会「国際法の断片化」報告の検討を実施したところ、特に「特別法優先原則」においては規範の“適用”と“例外”が両立し得るものとして扱われていることなど、安保理による「例外設定等」という実行を理論的に検討し得る材料を幾つか得ることができた。 また、英国国立公文書館において調査を実施し、国際軍に関する有益な資料を多く入手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は、安保理の解釈権限に関する文献の収集と考察を一定程度進めることができ、その結果、平成26年度における本格的な検討作業の方向性にある程度の目途をつけることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、平成25年度に引き続き文献資料の収集を進めつつ、本格的な検討作業に着手するが、以下の点に留意しながら文献収集及び検討作業を進める。 まず、国際法及び国内法の関連先行研究の文献調査に当たり、「例外設定等」による“法の不発動又は消極的な発動”という現象的特質に着目する。これは、本研究に“法と社会”に関する一般理論との関連性を持たせることを意識するものであり、かつ、学際的な検討結果の抽出をも研究成果の可能性として視野に入れるためである。 次に、「例外設定等」という実態を生じさせる安保理の解釈権限を批判的に考察するにあたり、「許可」実行が必要とされる社会的な政治状況の明確化、国際社会の秩序構造の現状とその特質との関連性、解釈権限を根拠づける既存の「黙示の権限」理論への批判的な眼差しなど、想定され得る多様な論点に留意する。 以上を踏まえ、総合的な問題把握を目指す。
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