2013 Fiscal Year Annual Research Report
動学的外部性の空間的波及と企業の生産性に関するミクロ計量分析
Project/Area Number |
25885046
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
山田 恵里 名古屋大学, 経済学研究科, 研究員 (30706742)
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Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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Keywords | 産業クラスター / 知識のスピルオーバー / 動学的外部性 / 空間計量経済学 |
Research Abstract |
平成25年度は,1986年から2006年における岐阜県,愛知県,三重県,静岡県の大都市雇用圏に分類される市区町村の製造業とサービス業を対象に,地域産業間の成長と知識のスピルオーバー(動学的外部性)が波及する産業及び,地理的な範囲について検証した。知識のスピルオーバーは,行政境界を超えた地域一帯で互いに関連のある産業間で波及する傾向を持つことから,特に産業集積との関係が強い。そのため,地域産業の空間構造に着目し,地域間の移動時間距離を利用して地域間の地理的な近接性を,産業間の経済的距離を利用して産業間の技術的な近接性を分析で考慮した。 分析結果より,4県を通じて大規模な地理的範囲に波及する知識のスピルオーバーは,輸送用機械器具製造業と技術的に近い製造業の産業集積かつ非競争的な生産環境において生じていることが明らかとなった。同時に,輸送用機械器具製造業との技術的な近接性に関わらず製造業全般では,産業の多様性が存在する環境で知識のスピルオーバーが波及し,地域産業の成長に影響を及ぼしていることが示唆された。 分析では,探索的空間データ分析の分析結果を知識のスピルオーバーが波及する産業と地理的な範囲を視覚的に捉えるために利用するだけではなく,空間計量経済モデルの変数に用いる地域産業の集積に関する指標を計測する際,産業間の技術的な近接性における閾値を設定するためにも利用している。互いに関連し合う空間構造を持つ地域産業のデータを扱う場合,データだけからは捉えにくい地域産業間の地理的及び技術的な空間構造を認識する必要がある。地域産業間の空間構造を適切に捉えた分析から,より現実に即した分析結果を得られたことからも,重要であることが確認された。 研究成果は論文にまとめ,国内外の学会にて研究報告及び意見交換を行った。また,査読審査後の修正を終え,国際的学術雑誌へ再投稿している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究初年度の計画として,岐阜県,愛知県,三重県,静岡県における地域産業の動学的外部性が波及する産業及び,地理的な範囲について検証できた。分析で考慮した産業間の近接性を含む地域産業間の空間構造を適切に捉えることは,既存研究の分析では不足していた点であり,産業集積や動学的外部性が波及する空間に関する研究分野における貢献であると言える。 しかし,研究の目的は集計された地域産業データから企業や事業所レベルのミクロデータを利用した,より詳細な動学的外部性の空間的波及範囲や経路を解明することである。企業や事業所レベルでの生産性上昇を計測する分析手法や企業や事業所間の空間構造に関する地理的な近接性及び,技術的な近接性については検討済みであり,目的達成には早急にデータベースを完成させ,研究の進捗を早める必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
企業や事業所に関する生産性上昇はTFP成長によって捉えるためTFP成長を計測し,TFP成長に影響を及ぼす要因の検証を行う。また,企業や事業所間の空間構造を考慮する分析を行うため,企業や事業所の空間構造に関する近接性は,住所データを利用して地理的な近接性を,取引データを利用して技術的な近接性を計測する。 分析では,生産活動に非効率が存在するという前提の下でも正確に生産性のTFP成長を計測できる手法として確率フロンティア分析を活用するため,計算プログラムの構築を進める。これまでの地域関連政策についてまとめ,現在の政策について評価し今後の政策立案への提言を行う。
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