2013 Fiscal Year Annual Research Report
都市の「遊び空間」と「子ども」をめぐる規範形成とゆらぎに関する歴史社会学的研究
Project/Area Number |
25885067
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
|
Research Institution | Mejiro University |
Principal Investigator |
高久 聡司 目白大学, 社会学部, 講師 (60711439)
|
Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
|
Keywords | 社会学 / 都市社会学 / 歴史社会学 / 教育社会学 / 都市環境問題 / 都市計画 / 学校空間 / 都市空間 |
Research Abstract |
本研究は、都市の「遊び空間」がどのように受容され、消費されてきたのかという歴史を明らかにし、都市空間をめぐる論争が「子どものため」というレトリックに揺らがされながら、「子ども不在」のままに空間が形作られてきた要因を考察することを目的としている。 本研究において2013年度では、博士論文を大幅に加筆修正した単著を出版し、これまでの研究の整理と、「子どものため」という問題へ迫る本研究の出発点を提示した。具体的には、学校の校庭という空間を都市問題とつなげ、「子ども」をめぐる問題が、「子どものため」というレトリックのみでは社会問題化されにくく、対立する「子どものため」というレトリックによって姿を消して行くこと、逆に、市民の生活環境上の問題や都市環境問題など直接に「子ども」とは関係しない諸問題が「子どものため」と語られることで、社会問題となっていく様を明らかにした。それゆえに、平成25年度は、交付申請書に記した課題1~3に対して横断的に取り組むことができたと考えられる。 本研究の意義は、一見すると「子どものため」というレトリックが機能しているように思えるが、それが機能する時には「子ども不在」のままに議論が進展し、事後的に「子ども」をめぐって問題となる、さまざまな実践に対する指針を提示しうる点にある。なぜならば、空間を作ること、政策を制定することは、「生み出す」ことを目的とするあまり、生み出される時に何が隠蔽されてしまうのかを忘却してしまう可能性があるためである。それゆえに、本研究は工学的研究、都市計画的研究と領域を重ねつつも、社会的背景に目を向け、空間づくりや政策立案に対する価値判断の基盤となりうる点に重要性がある。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「(3)やや遅れている」という結果になった理由は、以下の二点にまとめられる。 理由の第一は、研究実績の概要でも記したように「研究の目的」にあげた課題へ取り組むことはできたが、単著の出版準備と学内業務を同時に進行させて行くことになってしまったため、インタビューやフィールドワークを行うという計画を実施するための時間が取れなくなってしまったためである。 理由の第二は、本務校への着任初年度ということに加えて、担当授業数が非常に多く、授業準備に多くの時間を割かねばならなかったことによる。もちろん、その中でもできうる限りの研究には取り組んだが、当初の計画通りに研究を進めることは叶わなかった。 上記の理由を踏まえ、平成25年度は当初の計画を修正しながら研究課題へ取り組むことにしたため、単著を出版できたことは評価できるものの当初の研究目的、課題と比較するならば「(3)やや遅れている」という結果に至った。
|
Strategy for Future Research Activity |
「現在までの達成度」で示した通り、本研究の進捗具合はやや遅れ気味である。本年度も担当授業数が減少することもないため、学内業務とバランスを図りながら柔軟に研究計画を変更して行く必要がある。そこで、平成25年に実施する予定であった二次分析については、既存データや先行研究から理解した上で、現在、学内業務で担当している埼玉県戸田市との共同研究を本研究にも活かして、アンケート調査を行うこととする。それらと平成26年度の計画に記したテキストマイニングによる言説資料の分析とインタビュー調査を並行して行い、研究課題に応えて行くこととしたい。 埼玉県戸田市は、東京からのアクセスもよく、子育て世代の人口比率が高く、子育て支援政策も充実している。一方で子育て世代の転出人口の多さに課題があり、本研究の事例とするには適切な地域であると考えている。戸田市における調査は、平成26年7月までに調査票を送付することになっているため、十分に分析を行うことも可能である。インタビュー調査については、これまでの研究で協力をいただいてきた方に継続的に行なっていく他、戸田市の職員や関係者、市民にも適宜、実施して行く予定である。
|