2013 Fiscal Year Annual Research Report
経営者の裁量的会計行動 -パネルデータ分析と実態調査による因果メカニズムの解明-
Project/Area Number |
25885068
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Research Institution | Keiai University |
Principal Investigator |
平屋 伸洋 敬愛大学, 経済学部, 講師 (50715224)
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Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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Keywords | 会計学 / 実体的裁量行動 / 会計的裁量行動 |
Research Abstract |
本研究では,経営者の裁量的会計行動をより包括的に分析するために,これまで申請者が研究対象としてきた会計的裁量行動に加え,実体的裁量行動の因果メカニズムを理論的かつ実証的に解明することを目的としている。この目的を達成するために,平成25年は,パネルデータ分析を用いた会計的裁量行動と実体的裁量行動の包括的検証という研究課題を取り上げた。 当初は,金融業,保険業を除く全産業に属する企業サンプルを対象とした分析を想定していたが,文献研究を進めるなかで,上場企業における業種ごとの利益マネジメントの傾向に有意な差異があることが確認された[木村史彦「利益マネジメントの業種間比較」,『Discussion Papers』No. 108,2013年4月]。 そこで本研究では,木村(2013)が指摘する建設業にサンプルを限定した分析を行うこととした。その理由は,業種ごとの利益マネジメントの影響をコントロールするためである。また,建設業サンプルで得られた結果と全企業サンプルでの結果を比較分析することは,木村(2013)の研究結果と比較するうえでも有益であると判断したためである。さらに,平成26年に予定している実態調査においても,建設業を対象とした調査を行うことで分析の精緻化を図ることができるからである。 建設業サンプルにおけるパネルデータ分析の結果,会計的裁量行動と実体的裁量行動の双方の影響を確認することができた。また,両者の行動にとくに影響を与えている要因が負債(負債比率)にあることも明らかにされた。これらの結果は,これまでの先行研究の結果ときわめて整合的である。今後は,ここで得られた結果を,平成26年度に予定されている実態調査の結果と照合しながら分析を行う予定である。また,学会報告ならびに海外ジャーナルへの投稿を通じて,研究成果を国内外に広く発信する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の達成度についてであるが,申請者はおおむね順調に進展していると評価しており,80%程度は完了したと判断している。その理由であるが,実証研究に用いるパソコン,統計ソフトや本研究課題に取り組むうえで必要な文献などの研究インフラが整ったことで,平成25年に予定していた研究課題の実証研究をスムーズに進めることができたためである。また,当初の予想どおり,会計的裁量行動と実体的裁量行動の双方の影響を確認することができた点も,研究の順調な進捗と評価してよい点であえると考える。 しかしながら,平成25年における研究課題がすべて完了したとは言い切れない。残された課題が20%程度存在する。申請者が課題として認識する点は次の3点である。 ひとつは,特定の業種サンプルに限定した分析となった点である。当初は金融,保険業を除く全産業に属する企業サンプルを対象とした分析を想定していたが,本研究では木村(2013)が指摘する建設業にサンプルを限定した分析を行った。今後は,全体サンプルによる検証も行い,特定業種サンプルによる検証結果との違いや先行研究の結論との相違を把握していく必要がある。 次に,申請者が明らかにするポイントとして取り上げた会計的裁量行動と実体的裁量行動をトレードオフの問題である。これまでの分析では会計的裁量行動と実体的裁量行動の影響を確認することはできたが,それらが相互にどの程度影響し合っているのかという点については,より詳細な分析を進める必要がある。 最後に,平成25年における研究計画では,得られた成果を2014年に開催予定の日本会計研究学会全国大会にて報告するとしていた。しかしながら,応募締切日までに調査結果を明らかにすることができなかった。そのため,平成26年に学会報告と海外ジャーナルへの投稿を目指したい。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策について,【現在までの達成度】の理由に記述した残された3点の課題に沿って説明していきたい。 ひとつは,特定の業種サンプルに限定した分析となった点である。当初は金融,保険業を除く全産業に属する企業サンプルを対象とした分析を想定していたが,本研究では木村(2013)が指摘する建設業にサンプルを限定した分析を行った。平成26年度に予定されている実態調査を想定した場合,建設業に所属する企業を対象に実態調査を行い,その結果と実証結果を突合せて分析することは,精緻な結論を得るうえで効果的な方法であると考える。その一方で,より一般的な裁量行動の影響を捉えることも必要である。そのため,今後は金融,保険業を除く全産業に属する企業サンプルを対象とした検証も引き続き行っていくこととする。 次に,申請者が明らかにするポイントとして取り上げた会計的裁量行動と実体的裁量行動をトレードオフの問題である。これまでの分析では会計的裁量行動と実体的裁量行動の影響を確認することはできたが,それらが相互にどの程度影響し合っているのかという点については,より詳細な分析を進める必要がある。そこで,同時方程式や交差項による検証を検証モデルに取り入れることで,会計的裁量行動と実体的裁量行動の相互の影響を考慮した分析を行うこととする。 最後に,平成25年における研究計画では,得られた成果を2014年に開催予定の日本会計研究学会全国大会にて報告するとしていた。しかしながら,応募締切日までに調査結果を明らかにすることができなかった。そのため,平成25の研究成果は平成26年の研究成果と合わせて,平成27年に開催予定の日本会計研究学会全国大会(日程・開催場所は未定)にて学会報告を行うこととする。また,研究成果を国内外に広く発信するという趣旨から,平成26年度中に海外ジャーナルへの投稿を目指している。
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