2013 Fiscal Year Annual Research Report
1歳6か月児健康診査において子育て支援をする心理職の役割
Project/Area Number |
25885072
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
|
Research Institution | Shirayuri College |
Principal Investigator |
平沼 晶子 白百合女子大学, 文学部, 助教 (60709202)
|
Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
|
Keywords | 1歳6か月児健康診査 / 心理職 / 子育て支援 |
Research Abstract |
本研究は1歳6か月児健康診査における心理職の役割を明らかにして、地域に根差した子育て支援につなげることを目的とする。研究は2つの課題からなり、第1は1歳6か月児健康診査の中心にある保健師が心理職に求める役割を明らかにすること、第2は1歳6か月児健康診査を受診する養育者が心理職に求めている支援を明らかにすることである。 平成25年度研究では、第1の課題を推進するために、1歳6か月児健康診査に従事している保健師を対象に質問紙調査を実施し、保健師が求める心理職の役割を検討した。その結果、まず「子どもの発達支援」「養育者支援」「健康診査後のフォローへの橋渡し」が心理職の役割として示された。「子どもの発達支援」では、発達障害の早期発見の目的からも子どもの発達の適切な見立てが求められ、「養育者支援」では養育者の気もちに添った対応や具体的な助言により、子育て不安の軽減をはかることが必要とされていた。一方、子育てへの認識が低い養育者に対しては、養育者との関係を築きながら相談への動機づけを高めていくこと、支援が必要とされるケースは相談を継続していくことの大切さが示された。次に、「保健師への専門性の提供」も役割としてあげられ、保健師に対して子どもの発達の見極めや支援の方向づけに関するコンサルテーションを行うことが求められていた。 以上からは、心理職としての専門性を子どもの発達支援および親支援に活かすとともに、保健師にも適宜提供していくことの大切さが示唆された。現状として、保健所の乳幼児健康診査に従事する心理職は非常勤職員が多いため他職種とのつながりは薄く、その役割も個人の裁量に任されるなど明確ではないことが問題とされている。そのため、本調査で明らかにされた結果を心理職にフィードバックすることにより、1歳6か月児健康診査での役割に対する認識を高め、適切な支援につなげるという点に本研究の意義がある。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は研究計画書に従い、第1に「1歳6か月児健康診査に従事している保健師21名を対象とした質問紙調査」、第2に「1歳6か月児健康診査に従事している心理職4名へのインタビュー調査」を実施した。 具体的に述べると、まずA市における1歳6か月児健康診査に従事する保健師21名を対象に質問紙調査を実施し、1歳6か月児健康診査に携わる心理職に関して、1.どのようなケースを心理職に回しているか、2.心理職の役割として大切なこと、3.心理職が入ることのメリット、4.心理職との連携で難しい点、5.心理職への要望の5項目について自由記述による回答を求めた。得られた回答は5項目ごとにカテゴリー分類を行い、1歳6か月児健康診査において保健師からみた心理職の役割について明らかにした。 次に、以上で得られた結果に基づき、実際にA市の1歳6か月児健康診査に従事している心理職4名にインタビュー調査を行った。インタビューでは、先に示された心理職の役割をフィードバックするとともに、心理職自身は自らの役割をどのように捉えているのかを尋ねる半構造化面接を行うことにより、1歳6か月児健康診査に携わる心理職の課題について検討した。 以上の調査で明らかにされた結果の一部については、日本小児保健協会学術集会および日本発達心理学会にて発表を行った。 さらに、アメリカ合衆国ハワイ州ハワイ島ヒロで実績をあげている子育て支援プログラムHealthy Start Programの視察を行った。プログラムでは、0歳から3歳の子どもをもつ家庭への訪問を通して多職種が連携して家族全体を見守る、という地域に根差した支援が行われていた。そこには、日本の保健所における乳幼児健康診査に携わる心理職にも応用できる役割や支援体制が示唆された。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究では、本研究の第2の課題を推進するため、1歳6か月児健康診査に従事する心理職に対する「養育者のニーズ」を明らかにすることにより、時代の要求に見合った地域の子育て支援につなげていく。 まず、予備調査として1歳6か月児健康診査の受診経験をもつ母親にインタビューを行い、「1歳6か月児健康診査に携わる心理職に対する認識とニーズ」に関する基礎的情報を収集する。次に、予備調査結果に基づいて心理職へのニーズに関する質問項目を作成し、1歳6か月児健康診査の受診経験をもつ母親、約500人を対象に質問紙を用いた本調査を実施する。対象者の属性や状況によりニーズも異なることを想定し、質問紙には「子どもの数」「対象児の出生順位」「子どもの気質」「子育て不安の高さ」「子育てへの責任感の強さ」「子どもの発達に対する心配の程度」に関する質問項目を加える。また、調査は「子育て支援センター」「保育所」「幼稚園」など様々な場所で実施することにより、1歳6か月児健康診査を受診した頃に利用可能な支援の有無や差異が、1歳6か月児健康診査において心理職に求めるニーズとどのように関係しているのかにも着目する。同時に、「インターネットによる子育て情報の収集および子育て相談」と「1歳6か月児健康診査という対面式の相談」に対する認識の違いや、各々の長所と短所についても明らかにする。 これらの調査結果を、心理学および保健領域の学会での発表を通して報告するとともに、国内外のペアレンティング・プログラムの視察を通して、1歳6か月児健康診査に従事する心理職のあり方を、地域に根差した子育て支援という視点から検討する。
|
Research Products
(2 results)