2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25885082
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
廣見 正行 早稲田大学, 法学学術院, 助手 (20707541)
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Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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Keywords | 国際法学 / 安全保障法 / 武力紛争法 / 休戦協定 / 国連平和維持活動 |
Research Abstract |
本研究は、第二次世界大戦以後(1945年以後)に発生した国際武力紛争が「いつ」(終結時点)、「どのように」(終結要因)終結するかを国際法学の観点から実証的に検討し、現代国際法における終戦理論を確立しようとするものである。戦後の国家実行は、休戦協定によって国際武力紛争が終結するとの認識を示している。しかしながら、従来の国際法学において、休戦は、文字通り「戦闘の(一時的)休止」にとどまり、戦争を終結させる機能を有しないものとされてきた。本研究では、現代における休戦協定に関する国家の実行および法的認識に関する資料分析を基に、現代国際法においては、休戦協定に国際武力紛争を終結させる機能が認められるに至ったことを示すとともに、その理論的根拠を精緻化することを目的としている。 この目的を達成するために、2013年度は、休戦協定や休戦交渉に関する資料の海外調査を行うことによって、個別具体的な休戦協定の機能に関する当事国や国連の認識を解明した。2013年12月には、イギリス・ロンドンの「英国公文書館」において、イギリスの関係した朝鮮戦争、フォークランド紛争、湾岸戦争等に関する外交資料を収集・分析した。また、2014年3月には、アメリカ・ニューヨークの「国連公文書館」において、中東戦争の休戦発効後に派遣された平和維持活動に関する機密資料を収集した。これら資料において、紛争当事者や国連が、休戦協定の発効により国際武力紛争が終結するとの認識を示していたことが明らかとなった。 こうして得られた成果を基にして、2013年度は、国連憲章体制の下で国際武力紛争は休戦協定によって終結するとの理論的根拠を示した報告「現代国際法における休戦協定の機能」を早稲田大学比較法研究所の定例研究会にて行うとともに、上智法学論集に論説「国連憲章における休戦協定の機能変化ー朝鮮休戦協定を素材として」を刊行した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2013年度は、個別の休戦協定の解釈につき、交渉過程や締結後の実行を調査し、紛争当事国および国連が、休戦協定によって武力紛争が終結したとの認識を示していることを明らかにした。また、国連は、個別具体的に締結された休戦協定(特別法)を国連憲章の定める武力行使禁止原則(一般法)と連関させる法的理論を構築することによって、紛争当事国が休戦協定を破棄し武力行使を再開する可能性を否定する実行を行っていることも判明した(国連憲章と休戦協定の体系的統合)。 海外調査からは、次のような結論を得られた。まず、①現代国際法において、紛争当事国は、休戦協定を締結することによって、国連憲章の定める「武力による威嚇または武力の行使を…慎まなければならない」義務(第2条4項)を負うこととなる。そのため、②国連憲章が例外的に許容している自衛権の行使または国連の軍事的措置のいずれにも該当しないような、休戦協定の破棄および武力行使の再開は、国連憲章上、認められない。③自衛権や国連の軍事的措置は「新たな」武力攻撃や侵略に対して行使されるものであるため、「新たな」武力攻撃や侵略に対する自衛権の行使や軍事的措置の実施は「新たな」武力紛争を構成し、休戦協定以前に存在していた武力紛争とは法的に区別される。したがって、④現代国際法上、武力紛争は休戦協定の締結によって終結する。 2013年度は、このような成果を、「国連憲章における休戦協定の機能変化―朝鮮休戦協定を素材として」と題する論説として纏め、『上智法学論集』にて刊行した。また、一般に公開される早稲田大学比較法研究所主催の『定例研究会』にて、「現代国際法における休戦協定の機能」と題し、本研究の報告を行った。論説の刊行や報告によって、各方面から多様な指導、アドバイスを受けることができ、申請者の研究に貴重な示唆を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、前年度に扱うことのできなかった個別具体的な休戦協定に対する紛争当事国の認識を調査し、休戦交渉に関する資料を追加的に収集することによって、前年度に得られた論理的根拠・結論を強化し、休戦協定に関する国際法の一般理論に結びつけたい。 申請者はすでに、前年度、朝鮮休戦協定を素材として休戦協定の法的機能に関する国際法理論を纏めた論説を刊行したが、今年度は、同理論について英文で加筆を行った上で、朝鮮休戦協定の成立過程や近年の休戦状況に詳しい韓国・ソウル大学の教授に見解を伺い、指導を受ける。 こうして得られた研究成果について、各国の最先端の研究者・実務家との意見交換を重ねたい。「国連国際法委員会」では、今年度より「武力紛争に関連する環境保護」が審議されることとなっており、同議題では、「武力紛争」に関する国際法の最先端の審議が行われる予定となっている。そこで、国連欧州本部(スイス・ジュネーヴ)で開催される「国連国際法委員会」の審議を傍聴し、最先端の理論状況を把握したい。加えて、同委員会には関連する各国の研究者・実務家が集うため、申請者の試論についての意見交換も行いたい(申請者は同委員会の委員と既知であるため参加に支障はない)。 また、武力紛争に関する国際法の世界的な研究機関である「サンレモ国際人道法研究所」(イタリア・サンレモ)で開催されるワークショップに参加し知見を深めるとともに、各国の研究者・実務家との意見交換を行いたい。同研究所の図書館には武力紛争に関する国際法の希少な資料が多数所蔵されており、学説に関する資料収集も同時に行い、申請者の理論構築を強化したい。 以上の計画を遂行することによって、今年度、申請者は、武力紛争の終結に休戦協定が果たす機能について国際法の一般理論を構築し、その研究成果を論文に纏めるとともに、博士号(法学)の取得に向け、同課題の研究を進めていく。
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Research Products
(3 results)