2013 Fiscal Year Annual Research Report
国際危機における政治的コスト:「観衆費用」モデルの実証研究
Project/Area Number |
25885084
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
栗崎 周平 早稲田大学, 政治経済学術院, 准教授 (70708099)
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Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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Keywords | 国際政治 / 国際紛争 / 観衆費用 / ゲーム理論 / 構造推定 |
Research Abstract |
国際政治における「暗黒物質」といわれるメカニズムが近年研究者の注目を集めている。直接観察できないにもかかわらず、政府の対外政策に重要な影響を与え、国際政治理論における幾つかの主要なパズルを統一的に説明しうる理論モデルであると考えられている。いわゆる「観衆費用(Audience costs)」モデルである。本研究に対する科研費補助金により、観衆費用を統計的に推定することに成功した。具体的には、以下の実績を上げた2013年度には以下の成果を挙げた。 (1)論文"Detecting Audience Costs in International Disputes" に対するR&Rを国際関係論のトップジャーナルである_International Organization_から2013年4月に受け、レフェリーおよびエディターから要求のあった追加のデータ分析、分析の他の3つのデータセットにおける追試をおよそ8か月かけて遂行した。分析結果は予想以上にrobustであり、レフリーからの要求項目をほぼ網羅しつつも、我々のargumentを維持できるものであった。1月には最終的な改訂稿を確定させるために、共著者を韓国から招き集中的に原稿の最終調整、Revision memoの作成、さらに追加分析に対するSupplementary Material を完成させ、最終的に3月初頭に改訂稿を再投稿し現在は審査中である。 (2)それと並行して、この分析結果を日本の読者に対して速報を出すために、研究手法の初歩的解説を含めた研究速報をまとめたものを『レヴァイアサン』に投稿し、掲載が採択され、2014年4月に刊行された。 現在は、関連テーマで継続研究となる"Informational Effects of Audience Costs"を同じく政治学のトップジャーナルへの投稿に向け改訂中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
最初の論文"Detecting Audience Costs"の再投稿が当初の予定より3か月遅れ、したがってR&Rへの採否の決定も遅れている。二本目の論文も投稿できるまでには相当の時間を要する。3本目の論文については研究協力者を招く時期が当初の2014年3月から2014年9月ないし10月にずれ込んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
前述のように、1本目の論文は、再投稿先であるIOからの決定を待つのみしかできない。 2本目は、2014年12月までの投稿を目指す。この論文は全ての分析は基本的に終了しており、論文の草稿も出来ている。ただし、これまでの国際学会での発表やの他の研究者との意見交換を通して論文の構成や、結果の表示方法を変更する必要があるため、主に論文の書き換えと、分析結果の再解釈が主な作業となる。3本目は2014年9月ないし10月に研究協力者を米国ロチェスター大学より招き、この論文の一番の難関である統計分析上の問題を解決する。すなわち、これまでは国際紛争データにおける選択バイアスを考慮して、Heckman型の選択モデルを最尤法によって分析してきたが、データの構造のため尤度関数の最適化が収束しないという問題があったため、これをベイズ統計の手法を使って解決するというのが主目的である。この論文はIOへのリサーチノートとして2014年度中の投稿を目指す。
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