2013 Fiscal Year Annual Research Report
コーヒー流通業者を事例とした倫理的認証ラベル市場の形成をめぐる社会学的研究
Project/Area Number |
25885087
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
畑山 要介 早稲田大学, 文学学術院, 助手 (70706655)
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Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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Keywords | 社会学 / 制度的環境への適応 / 企業の社会的責任 / 認証ラベル / 倫理的取引 / 倫理的消費 |
Research Abstract |
研究初年度は、当初の研究計画にもとづき、倫理的認証ラベルの機能をめぐる分析、及びコーヒー流通業者への聞き取り調査を中心にデータ収集と分析をおこなった。 (1)倫理的認証ラベルの機能をめぐる分析 認証制度はサプライチェーンにおけるトレーサビリティの確保という側面が大きく、企業における認証導入においてもそれはひとつの動機付けとなっている。認証は、企業の制度的環境への適応に可能性を与えており、ステークホルダーからのまざなしという不透明性に対処する手段である。倫理的認証ラベルは、こうした企業の環境適応の側面を通じて、市民的調整原理のもとで倫理的な取引を促進するという機能を有していると言えるだろう。こうした機能によって、企業の利益追求を制御することを通じてではなく、利益追求と共振することを通じた倫理的経済の形成を促進することが可能となっている。本年度は、こうしたあり方の孕む問題と可能性を「自生的秩序論」ないしは「社会システム論」の文脈で紐解き、経済社会学会大会および経済社会学会研究例会で報告した。 (2)コーヒー流通業者への聞き取り調査 2013年度末までに4つの企業に聞き取り調査をおこなった。認証ラベルを導入し取り扱う現場においては、制度的環境への適応という側面がありながらも、倫理的消費市場に積極的なチャンスを見出していることが明らかとなった。すなわち、たんなるCSRとして認証を取得しているだけではなく、それらの商品としての販売能力もまた重視しているということである。しかしそれは、販売能力が低くなると認証が継続されるかはきわめて不確実であるということをも意味している。実際に、認証基準の厳格化によって、認証商品のラインナップを減らしつつあるという企業も存在した。なお、本年度においては予定していた企業すべてに調査をおこなうことができなかったので、次年度においても本調査を継続していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理論的分析が予想以上に順調に進み、学会での報告も早期の段階におこなうことができた。 ただ、質的調査に関しては、予定していた企業になかなかアポイントが取れないという事態があった。当初の聞き取り調査の水準を保つために、次年度は対象者をあらたに選定し、引き続き調査を継続していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
理論的分析は順調であるので、課題となるのは質的調査である。企業を対象とする調査であるので、アポイントを取るのが容易ではない。現在は、当初の予定にはなかった企業も含めて対象者を再選定中である。2014年夏までに、国内における残りの調査を完了し、速やかにイギリスとの比較分析に移行していくよう試みていく。
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Research Products
(3 results)