2013 Fiscal Year Annual Research Report
日・独・仏における高齢受刑者政策~ソーシャルワーカーの役割~
Project/Area Number |
25885096
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Research Institution | Nihon Fukushi University |
Principal Investigator |
鷲野 明美 日本福祉大学, 福祉経営学部, 助教 (50711587)
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Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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Keywords | 司法福祉 / 刑事政策 / ソーシャルワーカー / 高齢受刑者 / 司法と福祉の連携 / 日本 / ドイツ / フランス |
Research Abstract |
本研究は、平成25年度ならびに平成26年度の2カ年で、我が国における高齢受刑者政策およびソーシャルワーカーの役割の現状と課題を明らかにするとともに、ドイツ、フランスとの比較研究を行うことにより、今後の日本の高齢受刑者政策に一定の示唆を与えることを目的としている。 平成25年度の研究内容は下記のとおりである。 まず、日本の政策に関しては、文献、論文、ホームページ等を活用した調査に加え、法務省矯正局での高齢受刑者政策の今後の方向性に関する聞き取り調査(平成25年12月)、高齢受刑者の特性に合わせたプログラムを実施する刑務所(福島刑務所、福井刑務所)の担当者とソーシャルワーカーに対する、高齢受刑者処遇、ソーシャルワーカーの役割についての現状と課題に関する聞き取り調査(平成26年2月)を行った。 次に、ドイツ、フランスの政策に関しては、文献、論文、ホームページ等を活用した調査に加え、フランスでの現地調査(フランス司法省、リアンクール刑務所、受刑者を支援する団体)(平成26年3月)を実施した。 上記研究により、日本の高齢受刑者処遇とソーシャルワーカーの役割、フランスにおける高齢受刑者政策の現状等、既存の資料からは得られない情報を把握することができた。特に、日本の刑務所での現地調査では、高齢受刑者の特性に合わせたプログラム実施および相談援助を行うことにより、高齢受刑者の安定した社会復帰を目指していることを確認することができた。また、フランス現地調査では、高齢受刑者も含めた受刑者すべてに対し、人権尊重の観点から受刑者を取り巻く環境をできるだけ社会と同様にしようと取り組んでいること、民間団体とも協力しながらの受刑者処遇を積極的に行っていること、出所に向けた支援が早い時期より計画的に行われていることがわかり、これらの内容は今後の日本の高齢受刑者政策を考えるうえで大変参考になるものであった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、日本の高齢受刑者政策に関する研究として、平成25年度中に広島刑務所尾道刑務支所、長崎刑務所での現地調査を行うこととしていたが、先方との日程が合わず、実施することができなかった。 しかし、これに関しては平成26年度に実施することで研究目的は達成できるものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
日本の政策に関する研究としては、引き続き、文献、論文、ホームページ等の資料を活用した調査を行うとともに、平成25年度に行うことができなかった高齢受刑者の特性に合わせたプログラムを実施する刑務所(広島刑務所尾道刑務支所、長崎刑務所)の担当者およびソーシャルワーカーに対する、高齢受刑者処遇の現状と課題、そして、ソーシャルワーカーの果たす役割とその課題に関する聞き取り調査(平成26年6月予定)を行う。 次に、ドイツ、フランスの政策に関しては、文献、論文、ホームページ等の資料を活用した調査に加え、ドイツでの現地調査を実施する(平成26年4月25日から5月5日までを予定)。ドイツ現地調査では、バーデンビュルテンベルク州司法省とヘッセン州司法省で高齢受刑者政策について、バーデンビュルテンベルク州コンスタンツ刑務所ジンゲン支所、ヘッセン州シュバルムシュタット刑務所でソーシャルワーカーに対する、高齢受刑者処遇、および、ソーシャルワーカーの果たす役割の現状と課題についての聞き取り調査を行う。さらには、バーデンビュルテンベルク州とヘッセン州の保護観察所に対して、罪を犯した高齢者への支援に関する聞き取り調査を行うこととしている。 上記調査研究により得られた結果を基にして、日本の高齢受刑者政策とそれに関するソーシャルワーカーの役割について、ドイツならびにフランスとの比較を行い、実践レベルおよび政策レベルからの考察を実施する。 そして、平成26年8月2・3日に開催される日本司法福祉学会全国大会をはじめ、高齢者・障害者の権利擁護を考える会、東海司法研究会等での発表を予定している。 さらには、研究成果を報告集にまとめ、研究者、司法関係者、福祉関係者に広く発信することを考えている。
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