2013 Fiscal Year Annual Research Report
サービス業界におけるソーシャルメディアの商業化に関する研究
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25885098
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
佐野 楓 同志社大学, 商学部, 助教 (60707298)
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Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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Keywords | ソーシャルメディア / 商業化 / サービス業 / 顧客満足 / ポジティブな口コミ / 再利用行動 / コミットメント |
Research Abstract |
2013年度の研究目的は、消費者がソーシャルメディアによりいかなる影響を受けるか、また消費者がソーシャルメディアを通じて、他の消費者に対しいかなる影響を及ぼすかについて分析することである。研究対象には、サービス業を選んで研究を行った。 ステップ①、社会心理学、消費者行動学、サービス・マーケティングにおける先行研究及び今までの自らの研究に基づき、知覚品質、顧客満足、ポジティブな口コミ、再購買行動を変数として取り上げたが、これらの変数には消費者の購買決定から、再購買行動、或いは推奨行動までの一連の行動を表す心理変数が含まれるとは限らず、新たな変数(サービス業界における原産国効果)の必要性を検討した。その結果、サービス業界における原産国効果の存在を明らかにするとともに、サービスの良否に関する顧客の評価に原産国効果が強い影響を与えることを明確にした。 ステップ②、ソーシャルメディアによる宣伝を行っているサービス業種として損害保険サービスと旅行サービスを選び、ソーシャルメディアのサービス業界における重要性を明確にした。対象を損害保険サービスと旅行サービスに絞り込んだ理由は、事前調査の結果、顧客がこれらのサービスに対して、高い知覚リスクを持っており、ソーシャルメディアによる情報交換に頼る傾向が見られていたからである。また、先行研究に基づいて、ソーシャルメディアの効果を測定する指標を明確にするとともに、ソーシャルメディアから顧客満足、再利用意図などに与える影響を検討した。 2013年度の研究は、昨今世界的に普及しつつあるソーシャルメディアがサービス業界に大きな影響を与えていることから、その重要性は言うまでもなく、ソーシャルメディアによるサービス・イノベーションの側面から、顧客がソーシャルメディアによりいかなる影響を受けているかを明確にしたところに意義がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初「消費者がソーシャルメディアによりいかなる影響を受けるか、また消費者がソーシャルメディアを通じて、他の消費者にいかなる影響を及ぼすか」という2つの重要な研究目的を設定し、研究実施計画に提示した2つのステップに沿って研究を行った。 ステップ①では、サービス業界における顧客の利用行動、サービス評価に影響を与える変数を検討し、既存研究で頻繁に取り上げられて来た顧客の心理的変数以外に、顧客の利用や、サービス評価に影響を及ぼす変数を明確にすることを目的とした。研究の結果、顧客がサービスの良さを評価する際に、そのサービスを提供した国によりもたらされる原産国効果の方が、強い影響を与えることが明確になった。この成果は“Country-of-origin and brand effects on customers’ service evaluations”という論文として、また、ソーシャルメディアがサービス・イノベーションに果たす重要な役割に関する成果は“Does social media enhance innovation in customer relationship management”という論文として学術誌に掲載された。 ステップ②では、顧客の心理変数の間の因果関係を統計手法によりモデル化することを提示したが、それに関しては、対象を知覚リスクの高い金融サービスに絞り込んで、顧客が金融サービスを利用する際、ソーシャルメディアからいかなる影響を受けるかについて研究を行った。この成果は「金融サービスの利用におけるソーシャルメディア商業化の影響」という論文に纏め、現在投稿中である。 しかし、研究計画の中で提示していた日米比較に関する研究の部分については、2013年度には実施できなかった。それについては、今年の8月にテキサス大学のIC2研究所で実施したいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究目的は、サービス企業がソーシャルメディアにより顧客の行動をいかに誘導するか、また企業にとって最も有力な宣伝手段としていかに利用するかについて探索していくことである。 ステップ①では、日本の顧客に対して、ソーシャルメディアを商業化するモデルの探索と定量分析を行う。すなわち、昨年度で建てられた消費者の購買決定から再購買行動までの一連の心理的プロセスに関わるモデルに基づいて、ソーシャルメディアから最も影響を受ける部分を選り分け、ソーシャルメディアをいかに商業化するについての研究を進める。 ステップ②では、上述の定量分析に基づき、ソーシャルメディアの手法をもいいて、サービスの無形性から齎される知覚リスクの高さをいかに克服し、ソーシャルメディアをサービス企業の最も効果がある宣伝手段として、いかに利用するかと言うビジネス・モデルの構築を試みる。 ステップ③では、リレーションシップ・マーケティングの視点から、ソーシャル顧客関係管理について探索していく。ソーシャルメディアの成長と普及によって、ソーシャル顧客関係管理は従来の顧客関係管理の代わりに、益々多くの企業に応用されると考えられる。そのため、このステップでは、ソーシャルメディアを通じて、企業が顧客との長期的なリレーションシップをいかに構築するか明確にする。 ステップ④では、グローバルに事業を展開している日本企業の代表的な会社を対象として、今までの研究結果に基づき、日本のサービス企業が商業化されたソーシャルメディアを通じて、異なる文化を持つ顧客との安定的なリレーションシップをいかに築いていくかに関し、研究を進める。
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Research Products
(6 results)