2013 Fiscal Year Annual Research Report
オプション価値評価の効用と課題:投資意思決定の精度向上に関する研究
Project/Area Number |
25885108
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Research Institution | Kansai Gaidai University |
Principal Investigator |
北尾 信夫 関西外国語大学, 外国語学部, 准教授 (00708969)
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Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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Keywords | 管理会計 / 資本予算 / 投資意思決定 / リアルオプション |
Research Abstract |
本年度は、研究の理論的枠組みの確立と最初のケース・スタディの実施を重点に取り組んだ。最新の文献調査や学会、研究会への参加を通じて得た知見をもとに研究の視点を見直す一方、以前の調査で得たデータに、今回入手したデータを加えて、新たな角度からデータを見直した。それらの結果を踏まえ、ケース・スタディを実施するためのデータ収集の手順を作成し、数社にインタビューを打診、A社の協力を得て最初のケース・スタディを実施した。 A社では投資意思決定のプロセス・手法が確立され、投資案を専門的に評価する組織を有し、社員への普及啓蒙も活発に行われている。起案時に様々なシナリオが検討され、投資案に含まれるオプションも考慮されている。しかし、投資の事後評価は投資案件単位ではなく部門業績評価の範疇で行われることが多いことがわかった。例えば、部門業績が好調な間は投資の延期、追加的な投資、操業度の調整などは部門の裁量範囲に含まれるが、設備の転用・事業からの撤退などは部門業績の悪化に伴い、全社の構造改革の枠組みの中で議論、検討される。特に、後者の場合、必然的に株主や従業員をはじめとするステーク・ホルダーへの配慮が必要となり、これらのオプションの行使は、単にファイナンス的な観点からのみ実施できるものではない。 このインタビューで得られた情報は、北尾(2013)のサーベイ結果と概ね整合的であり、サーベイがなぜそのような結果になったのかを示唆する重要な資料を得ることができた。これまでの理論研究では投資意思決定を、決裁を中心とした「点」と見なすことが多かったのに対し、実務では投資に多様なシナリオを見いだして複数の「線」として考える企業が多い。本年度の研究から投資事後評価と部門業績評価の関係を突き詰めていくことが、これらの企業の投資意思決定の精度を高めるための研究の方向性として有力であることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
WindowsXPのサポート終了に伴う統計分析環境の再構築と研究に必要なデータベースの移行に時間がかかったが、最初のインタビューが比較的スムーズに実施できたことで、概ね計画通りに研究を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
初回のインタビューの結果を研究の理論的枠組みに反映させ、ケース・スタディの方法に改良を加える。引き続き、複数の企業に調査への協力を依頼しデータの収集を進める。これらの調査で得たデータを整理分析し、解釈を加え、論文としてまとめる。研究成果は平成26年9月に学会発表をしたのち、会計系の学会誌へ論文として投稿する予定。
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