2013 Fiscal Year Annual Research Report
論証に関する推論能力に着目した説明的文章読解カリキュラムのスパイラル構造化
Project/Area Number |
25885113
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Research Institution | Hijiyama University |
Principal Investigator |
青山 之典 比治山大学, 現代文化学部, 准教授 (00707945)
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Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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Keywords | 論理的認識力 / 説明的文章 / 論理の創造と検討 / 意味内容の創造と検討 / 読解能力 / スパイラルカリキュラム / Strand |
Research Abstract |
本研究は、説明的文章の読解スパイラルカリキュラムを構築することを目指すものである。平成25年度には、論証に関する推論能力を論理的認識力として設定し、その能力構造を措定した。 まず、論理的認識力の重要なファクターである論理的思考力の再構造化を行った。論理的思考力の概念規定は研究者によって様々であり、再構造化する必要があるからである。本研究においては、論理をテクストのマクロ構造における因果関係と捉え、狭義の論理的思考力をテクストの根幹となる主張と根拠の因果関係を把握するときに働くものと限定した。ちなみに、説明的文章の場合、主張と根拠の関係を強化するために、「理由づけ」や「裏づけ」がメゾ構造やミクロ構造に存在するが、それらの構造は様々な関係性によって構成されている。そこで、狭義の論理的思考力は、メゾ構造やミクロ構造における関係性を解釈する能力と統合的に機能し、広義の論理的思考力を構成していると考えた。 第2には、認識の限界に応ずるための下位能力の設定を行った。認識主体が、論理的思考力によってテクストを解釈したとき、その意味内容の真偽性や妥当性を検討するにはメタ的に対応する必要がある。そんなとき、認識主体は自らの既有知識や経験を引き出し、実感的に自らの解釈を再構成したり、批判的に検討したりする。この過程で、論理的思考力を再び機能させ、自らの解釈に問題があるのか、テクストそのものに問題があるのかを追究する。そして、この追究の先には自らの認識内容と認識方法との再構成が行われると考えられる。このように自らの認識の限界に向き合い、検討し、認識内容と認識方法とを再構成する能力を「意味内容を創造し、検討する能力」として位置づけた。 このような理論的な検討と共に、自らの授業実践記録や、他の実践研究者の実践記録を元にした検証など、実践的な検討も並行して行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「論理的認識力」を育成する実践的研究は様々に行われてきたが、「論理的認識力」の概念規定を行う研究は、これまで避けてこられた傾向にある。つまり「論理的認識力」の概念規定を明らかにすることなく、その育成を目指す実践的研究がなされてきた実態があり、研究が積み上がっていかない問題があった。しかし、論理的認識力の概念規定はその育成のためのカリキュラム構成に欠くことができない。したがって、先行研究の成果を批判的に継承して、論理的認識力の能力構造を明らかにすることは、スパイラルカリキュラムの内容を決めていく上で、避けては通れないことであった。この大きな関門を突破するために、平成25年度には、論文発表、学会発表、実践現場での共同研究を通して、以下のように理論の再構築を進めてきた。 【論文の主なもの】①「Strand概念の導入による読解カリキュラム改善の可能性―要点・要旨把握指導に焦点をあてて―」(青山之典、2013、『広島大学大学院教育学研究科紀要』第1部第62号、pp.99-107)/②「論理的認識力―日常の論理の偏向に対応する認識能力の構造―」(青山之典、2013、『比治山大学現代文化学部紀要』第20号、pp.135-143)/③「説明的文章の授業における「論理的認識力」設定の意義―論理的で豊かな意味内容の創造と検討を実現するために―」(青山之典、2014、『国語教育思想研究』第8号、国語教育思想研究会、pp.)【学会発表】「説明的文章読解カリキュラムにおけるStrandの構成に関する一考察―説明的文章読解カリキュラムのスパイラル化に向けた検討―」(全国大学国語教育学会第124回弘前大会、自由研究発表)/「論理的認識力(1)―「論理的認識力」を概念規定する必要性―」(全国大学国語教育学会第125回広島大会、自由研究発表) 以上の実績から、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度の実績を踏まえて、今後は次のように研究を推進していく予定である。 まず、論理的認識力の下位能力のうち、現在検討中である「表現主体の背景を検討する能力」についての研究を進め、概念規定を完成させる。 その上で、小学校国語科教科書における各学年の教科書教材をもとにした授業を構想する試みを通して、各学年における目標を検討する。その結果をもとにStrandの構成について再検討して、カリキュラムを措定する。 この研究にあたっては、平成25年度に試験的に取り組んだ授業研究の手法を本年度も批判的に継承し、各学年の目標を具体的に考えていく。また、それぞれの学年の児童の実態をもとにして、論理把握の方法などについて、工夫すべき点を取り入れるようにする。例えば、これまでの研究において明らかにした、論理把握のための図化方略論などの研究成果を活かしていくようにしたい。 また、アメリカ合衆国の国語科教科書とアメリカ合衆国のスタンダードカリキュラムであるCommon Core State Standards for English Language Artsとの関係について検討し、スパイラルカリキュラムにおける目標群がどのように構造化されているかをつかんで、学習者の実態に応じたStrandの構成に取り組みたい。 そして、新しいカリキュラムをもとにした、論者(青山)以外の授業者を主にした共同授業研究および協議を通して、カリキュラム構造および目標のわかりやすさ、授業への具体化の現実性など、さらに具体的な検討を進め、Strandの構成について再検討していく。特に、授業者から見て、新しいカリキュラムは授業づくりを進めやすいものであったか、論証に関する児童の推論能力の向上に寄与したかなど、構築したカリキュラムのもつ効果について検討し、再修正の糧としたい。
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Research Products
(6 results)