2013 Fiscal Year Annual Research Report
医療現場と日常会話における問題解決:相互行為論的アプローチによる日米比較研究
Project/Area Number |
25885121
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Research Institution | Kansai Gaidai College |
Principal Investigator |
川島 理恵 関西外国語大学短期大学部, 英米語学科, 講師 (00706822)
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Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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Keywords | 会話分析 / ヘルス・コミュニケーション / 医療社会学 |
Research Abstract |
本年度は,①これまで収集した医療系および日常会話データの分類・整理し,②その分析に関する論文執筆および発表を行い,さらに②新しいデータコレクションが可能な現場の開拓を試みた.以下それぞれについて具体的に述べる. ①まず現存の医療系データに関しては,不妊治療・救急医療・高齢者施設での簡単な診療という3つのデータを整理した.その中で文字化が為されていないデータが多くなり,それらについてはトランスクリプションの作成を行っている.また日常データに関しても,問題交渉場面の抽出を行うために,質的分析ソフトの検討を行っている. ②特に救急医療における問題解決について,その具体的な会話構造に関する分析を行い,その結果が「日本社会学評論」に掲載された.また養育者―子ども間相互行為についても,両者の主張が異なる場合の解決方法に関して分析を進め,現在「日本文化人類学会誌」に投稿中である.当初想定していた分析軸である身体や沈黙などを中心に分析を行い,緻密な会話構造について比較検討している.さらに,上記の分析については,日本救急医学会や会話分析研究会などで発表を行い,他の研究者からもフィードバックを得ている. ②新しい調査現場の開拓については,現在進行中である.本年度は,いくつかの日本及びアメリカのクリニックにコンタクトを開始している状態である.ただ,アメリカでの調査はアメリカでの倫理委員会(IRB)が必要なこともあり困難が予想される.首都圏の訪問診療を行う病院で調査を行う打ち合わせを進めている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の①データの処理整理,②分析の発表に関しては,一定の成果を挙げている.特に,②については,国内の社会学系学術雑誌としては評価の高い「社会学評論」に論文が掲載されたことは,評価できる.また,これまでのデータは様々な分野に渡り,かつ大量であるため,その整理をある程度進め,分析可能なデータコーパスの作成が進行していることは,ある程度の成果としてみなすことができる. しかし③新規データ現場の開拓については,未だ新たな現場の獲得には至っていない.その点で,さらに次年度では,アメリカや日本におけるデータ収集を行う予定である.具体的には,26年6月には,アメリカ・ロサンジェルスにおいて日常データの収集を予定している.そこで比較検討できるデータを入手できれば,さらに分析の幅が広がることが期待される.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度では,①現在行っている現存データの整理を進め,さらにatlas.tiなどの質的データソフトを導入することで,分析の効率化を計る.また②新規データの獲得に関しては,今後もコンタクトを続け,首都圏でのデータコレクションを出来る限り進める.以下,それぞれについて詳しく述べる. ①現存の所有データは,医療場面・介護場面・日常場面の3種類に分類できる.それぞれのデータのトランスクリプト作成とデータ加工(音声の改善など)を,外部業者に委託するなどしてスピードアップする予定である.また,質的ソフトを使うことで,より効率的なデータ分析を進める.具体的には,データの中から,交渉部分の抽出及び分析軸である「身体動作・沈黙・発話行為」といった概念を付与し,関連したデータが一挙に参照可能な形に整理を進める.これによって,類似データの比較・検討が可能となる. ②新規データに関しては,2つの拠点で進める.まず現在コンタクトを行っている首都圏の病院において新規のデータコレクションを試みる.この病院は,在宅訪問や退院面談など家族をふまえて治療方針を決定する実践に力を入れているため,今回の研究の新たな現場としては,最適であると考えている.次に,アメリカの日常テータ収集に関しては,26年6月にロサンジェルスにおいて日常場面のデータ収集を行う予定である.これにより,日米の比較データをコーパスに加え,さらに分析を拡大する予定である.
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