2013 Fiscal Year Annual Research Report
マイノリティの居住と福祉の問題を解決する社会政策の形成とメカニズムに関する研究
Project/Area Number |
25885127
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Research Institution | Kyoto Human Rights Research Institute |
Principal Investigator |
山本 崇記 公益財団法人世界人権問題研究センター, その他部局等, 専任研究員 (80573617)
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Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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Keywords | 社会学 / マイノリティ / 社会政策 / 部落問題 / 在日朝鮮人 / 地域社会 / エスノグラフィ / 社会調査 |
Research Abstract |
平成25年度は、まず、同和地区へのフィールドワークを中心的に実施した点を挙げることができる。主に関西圏(奈良・滋賀・和歌山・京都)、四国(高知・徳島)、中国(鳥取)、関東(神奈川)などを対象に実施し、資料収集につとめた。また、非同和地区である沖縄県への調査も行い、新たな比較検討に向けた知見を得た。これらの調査・資料収集活動は、関係各機関との協力関係も活用し、比較的、円滑に実施することができた。そのうえで、同和地区における居住と福祉をめぐる社会政策の比較研究を行い、これまで対象としてきた京都における同和行政や地域住民の特性を意識し、同和地区における社会政策や社会的実践が持つ普遍性と特殊性を明らかにしていった。その成果は、所属機関の紀要に論文として公表した。京都府市内を中心に一般市民が目にする定期発行物や講座・講演会、資料展示等の場では、これらの研究成果を生かしたアウトリーチ活動も実施することができた。 自治体行政の役割や存在位置の消極性と、当該地域住民の自立性の条件に相関関係があることなどが明らかになった。また、隣保事業の有り様と多文化共生事業との関係についても、コリアンコミュニティ研究会の学会誌に論文を掲載し、成果を公表した。 社会調査をめぐる社会学研究としては、立命館大学生存学研究センターのプロジェクトであるエスノグラフィをめぐる人類学的・社会学的再検討を目的とする「現代社会エスノグラフィ研究会」での報告を実施し、社会調査を行う自己の対象化の方法について幅広い視点から検討を行った。さらに、所属機関の共同研究会で実施されてきた調査史の歴史社会学的研究の成果公表に携わることで、今、どのように社会調査を行い記述していくのか、という点だけでなく、これまでの被差別地域の対象化をめぐる行政的・社会学的研究の再検討も行うことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の達成度については、おおむね順調に進展していると言える。一年次として、フィールドワークと資料収集を主な計画に挙げたが、当初予定していた地域の全てに調査を実施し得たわけではないものの、多くの地域に足を運ぶことができ、また、今後の継続的な調査に向けた関係性も構築し得たことが大きい。さらに、これまで研究対象としてきた関西地域での調査活動も進展したため、比較研究を行う上での、条件を整えることができた。 さらに、所属機関の様々な活動の中で、還元活動の機会にも恵まれ、学会等のアカデミズムの場での報告などはもちろんだが、ひろく社会に成果を発信することもできた。さらに、そのリアクションや反応なども事後的に得ることができたため、同和問題をめぐる研究の還元活動における様々な課題についても知見を得ることができた。 そして、社会調査をめぐる社会学的研究についても、歴史的且つ現代的なアプローチを通じて、共同での研究活動の場で成果を生かすことができ、一定の進展を見せることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策については、引き続き、これまであまり調査・研究の対象となっていなかった同和地区へのフィールドワークを行っていくのと同時に、非同和地区への調査も行っていく。同和地区に関しては、特に同和行政の終結の場面に着目し、差別を是正しようとする社会政策が、どのように終結の条件を整備していくのか。また、当該地域がそのことにどのように関与したのか。これらのプロセスの検討を通して、社会政策のメカニズムを明らかにしていきたい。これらの研究成果は、随時、学会報告、研究論文として公表される。また、様々な形を伴ってアウトリーチ活動を行っていく予定である。差別や排除をめぐる社会調査や社会学研究をめぐる成果についても、順次、公表を行っていく。
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Research Products
(4 results)