2013 Fiscal Year Annual Research Report
脱合金化によって形成される金ナノ粒子の多孔質構造の形成メカニズム
Project/Area Number |
25886002
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
伊藤 良一 東北大学, 原子分子材料科学高等研究機構, 助教 (90700170)
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Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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Keywords | 金銀合金 / 脱合金 / 電子顕微鏡 / その場観察 / 多孔質構造 |
Research Abstract |
昨年度、金銀合金ナノ粒子の脱合金化の実験を行い、脱合金化のメカニズムが粒子の粒径に依存しているかどうか調べた。脱合金化処理後、電子顕微鏡を用いて粒子を観察したところ、脱合金化されて穴の開いている粒子と穴の開いていない粒子が点在していることがわかった。粒径サイズが13 nm以上の場合、バルク合金と同様に標準電極電位が大きい銀が選択的に溶出して多孔質を形成した。一方で、穴が開いていない粒子の粒径とEDSで原子濃度を計測したところ、銀の原子濃度が高いことがわかった。これはつまり、粒径サイズが10 nm以下の場合、標準電極電位による銀の選択的溶出エネルギーよりも粒径が小さいことによる幾何学ポテンシャルエネルギーのほうが大きくなるため、安定である金も銀と同時に溶出し始めたと解釈することができ、脱合金化による多孔質形成はある一定化のサイズ(10 nm)では起こらないことを実験的に示せた。さらに、これらのパラメーターを用いて、金銀合金ナノ粒子の脱合金化を電子顕微鏡を用いて液体中その場観察を試みた。実験はまだ途中であるが、脱合金されていく過程を秒単位で測定することに成功している。しかしながら、技術的な問題点は多く、まだまだ改善をしなければいけない状態である。以上の成果は、学会発表(分子科学討論会、日本化学会年会)を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度の課題である「脱合金化によって形成される金ナノ粒子の多孔質構造の形成メカニズム」にあるように金ナノ粒子が多孔質構造を形成メカニズムを調べた。多孔質形成初期、中期、後期に相当する状態の試料を個別に作成することによって断片的に解明することが出来た。これにより、粒子粒径が13 nm以上ではバルクと同様の多孔質化現象が起こり、10 nm以下では多孔質化が起こらず、粒子自身が持つ幾何学ポテンシャルエネルギーによって構造の自己崩壊が起こることまで明らかに出来た。本年度は去年度成功した同様の条件を用いて電子顕微鏡内に試料を入れて多孔質化させながら状態を連続その場観察を行い、さらに詳しく多孔質形成メカニズムを調べる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
去年度の終わりから始めた電子顕微鏡を用いた金ナノ粒子の多孔質化の液体中その場観察を続ける予定である。電子顕微鏡観察は電子線を発生させ試料に透過させて結像し観測する手法のため、試料を乗せる窒化ケイ素セルの工夫が必要である。セル自身の厚い場合、電子線が透過しなくなるので解像度が著しく下がり原子分解能観察が出来ないため、原子分解能観察するために液体観察用セル窒化ケイ素の膜を可能な限り薄くしなければならない。しかし、セルが薄いほど作成するのが非常に困難であり、また、機械的強度が著しく弱いという問題点がある。そこで申請者は東北大MEMSと連絡を取り、液体観察ホルダーに適応した厚さ10 nmの窒化ケイ素セルの設計を行う。窒化ケイ素の10 nmの超薄膜を持つセルの到着後、申請者が液体観察用に加工し、液体を流しながら電子顕微鏡内で自作セルの品質チェックを行う予定である。
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