2013 Fiscal Year Annual Research Report
MOS界面の電荷補償による高移動度Ge MOSFETの実現
Project/Area Number |
25886010
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
山本 圭介 九州大学, グリーンアジア国際リーダー教育センター, 助教 (20706387)
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Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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Keywords | 電子・電気材料 / 半導体物性 / MOSFET / ゲルマニウム / ULSI / 低消費電力 |
Research Abstract |
大規模集積回路(ULSI)の更なる高性能化(高速・低消費電力化)に向けて、その基本構成素子である金属-酸化物-半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)の性能向上が世界中で検討されている。本研究ではその実現に向けて、材料としてゲルマニウム(Ge)に焦点を当て、「MOSの界面電荷と固定電荷の相互補償による高移動度化」に取り組んでいる。これは、MOSFETのゲート絶縁膜中の電荷の総量をゼロとすることで、ゲート直下にある導電路(チャネル)を通るキャリアが受ける散乱を極小化し、極めて高い移動度の実現を図るアイデアである。 MOS界面で電荷を補償するためには、ゲート絶縁膜中の固定電荷を制御する必要がある。固定電荷は、MOSの容量-電圧(C-V)特性のフラットバンド電圧(VFB)に反映される。即ち、“+”の固定電荷が多ければVFBは負方向にシフトし、“-”の固定電荷が多ければVFBは正方向にシフトする。つまり、VFBを調べることで、ゲート絶縁膜中の固定電荷の量を求めることができる。H25年度は、このGe MOSの固定電荷制御に関して以下の成果を得ている。 本研究では、MOSゲート絶縁膜の基本構造としてAl2O3/GeOx/Geを採用した。Ge基板上に原子層堆積法(ALD)によって極薄Al2O3膜(1 nm)を堆積したのち、基板にECR酸素プラズマを照射してAl2O3/Ge間にGeOx層を成長させる。この時、ECRプラズマの条件(照射時間、酸素流量、圧力およびマイクロ波パワー)を変化させることで、絶縁膜(Al2O3)中に含まれる酸素原子並びに固定電荷の量を制御できると考えた。 実験の結果、照射時間が長くなるほど、また酸素流量が多くなるほど、VFBは負方向へとシフトした。これらの結果は、酸素由来の“+”の固定電荷が絶縁膜中に存在し、またその制御が可能であることを意味している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書に記載した当初のH25年度計画では、MOSゲート絶縁膜の基本構造としてSiO2/GeOx/Geを考えていた。しかし、この構造ではGe実用化が見込まれる2018年以降のULSIで必要とされる、極薄のゲート絶縁膜(SiO2換算膜厚(EOT)で1 nm以下)を形成することが難しい。そこで方針を転換し、実際のH25年度研究では基本構造としてAl2O3/GeOx/Geを採用した。この構造では1 nm以下の極薄EOTに対応できる。結果として、Al2O3/GeOx/Ge構造に対して、酸素流量に代表されるECRプラズマの条件を調節することで、当初計画していたゲート絶縁膜中の固定電荷密度の制御に成功した。この点は予定を上回る成果を達成したと判断する。 しかしながら、当初のH25年度計画で予定していた、MOSゲート絶縁膜のDLTSによる界面準位密度の算出は、実施しているものの体系的なデータ構築には至っていない。界面準位密度を正確に把握することは、MOS界面での電荷補償を考える上で必要不可欠であるため、今後速やかに評価を行いたい。また、同じく当初計画していたXPSによる酸素量の定量評価も現状では行えておらず、H26年度の課題として残っている。現時点で、酸素が“+”の固定電荷を発生させていることは定性的に判断できているが、XPS評価と電気的評価を対応させて定量的な関係性を構築することは、工業的な応用面だけでなく絶縁膜中の酸素原子の挙動を物理的に解明する上でも重要なデータとなるため、この点も速やかに評価を進めたい。 以上を総合して、全体的に本研究はおおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
「現在までの達成度」欄にも記載した、「DLTSで界面準位の評価」と「XPSによる絶縁膜中の酸素量の定量評価」の他に、以下の研究を推進する。 「金属元素導入による固定電荷の制御」 これまでに、ECRプラズマ条件の調節によってAl2O3/GeOx/Ge構造の固定電荷制御に成功しているが、より広い範囲での制御を目指して、申請書にも記載した「ゲート絶縁膜への金属元素導入」を検討している。具体的には、AlおよびHfをゲート絶縁膜上に堆積した後に熱処理を施すことで、これら元素を絶縁膜中へと微量拡散させて、それによる固定電荷の制御を行う。 「MOSFET試作による固定電荷と移動度の関係性の掌握」「高移動度MOSFETの実現」 H25年度の研究実績ならびに上記の研究施策によって得られた固定電荷の制御に関する知見をベースとして、様々な固定電荷量を有するGe MOSFETを作製する。“+”の界面電荷を有するp-MOSFETは“-”の固定電荷が生じるように、逆に“-”の界面電荷を有するn-MOSFET は“+”の固定電荷が生じるように作製する事で、互いの電荷を補償でき、高移動度が期待できる。MOSFETの作製プロセスは、すでに十分な経験を有しているが、ゲート絶縁膜の固定電荷に影響を与えないように、改めて慎重にプロセスを検討する。MOSFETの電気特性から移動度を算出し、固定電荷と移動度の関係性を体系的にデータ化する。固定電荷と界面電荷の総和が実効的にゼロとなった(すなわち、補償された)際に、移動度が最大となることが期待される。最終的に、得られたデータを総合して、高移動度Ge MOSFET実現に必要な条件を割りだして、特にn-MOSFET で1,000 cm2/Vsを越える移動度実現を目指す。
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