2013 Fiscal Year Annual Research Report
新規芳香族イミド体の合成・物性評価およびD-A隣接積層型分子集合体の創製
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25886012
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
酒井 隼人 慶應義塾大学, 理工学部, 助教 (60708486)
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Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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Keywords | コロネンイミド / 電気化学特性 / 光物性 / 置換基効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
芳香族イミド体は優れた電子受容特性や電子移動特性、積層特性を示すことから有機半導体に利用可能な新規化合物として注目されている。一方、イミド基は窒素原子に水素原子を配置すると、トリアジニル基との三重水素結合形成が可能となる。したがって、ゲスト分子を外部から簡便に導入することができる。本研究では平面型多環芳香族炭化水素コロネンにイミド基を系統的に配置したコロネンイミド誘導体を合成し、イミド基の数と環構造変化に伴う電子物性について詳細に検討し、芳香族イミド体の基礎物性の確立と新規電子受容体創製をまず目指した。次にトリアジニル基を有する電子供与性有機色素ポルフィリンをゲスト分子に用い、光エネルギー変換機能を有する分子集合体を構築した。 各コロネンイミド誘導体はDiels-Alder反応を鍵反応とする合成経路を設計し合成することに成功した。まず合成した各誘導体の電気化学特性の評価を行った。結果、イミド基の数が増加するとともに還元電位は正の方向に進行することが分かった。特にイミド基を4つ導入したコロネンテトライミドやイミド基を3つ導入したベンゾペリレン誘導体は、代表的な電子アクセプター分子フラーレンと同等の還元特性を示すことが分かった。とくに、コロネンテトライミドはLUMOが二重に縮重するという興味深い物性を示した。 次に、各種分光特性評価を行った。イミド基の導入に伴い、三重項生成量子収率が向上した。これはイミド基のスピン起動相互作用によるものであることがわかった。以上、フラーレンと同等の還元特性を示す新規電子アクセプター性の分子の構築に成功した。さらに、コロネン骨格にイミド基を導入したコロネンイミド誘導体の基本的電子物性の確立することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロネンイミド誘導体の合成手法を確立することに成功した。また電気化学特性を評価したところ、代表的な電子アクセプター性分子であるフラーレン(C60)と同等の電子アクセプター性を示したことから、フラーレンに利用できる電子ドナー性の分子を用いることで光誘起電子移動による光エネルギー変換系への展開は大いに期待できる。その際、超分子的手法を利用しようと考えているのだが、多環芳香族イミド体の代表的な分子であるペリレンジイミドの特性を参考にすると、この分子は溶解性が非常に悪い。この点を踏まえ、今回合成した分子に溶解性向上のために適切な置換基導入の検討の必要がある。さらに、水素結合形成を利用した超分子集合体の構築を計画しているので、コロネンイミド誘導体に水素結合形成部位の導入についても検討する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、溶解性向上のための置換基について議論していく。現時点においては一般に高い溶解性と集積特性を示す分岐状アルキル鎖を導入する置換基の候補として考えている。その後、水素結合形成部位の導入に取り掛かろうと計画している。一連の合成を達成した後、合成した水素結合形成部位を有するコロネンイミド誘導体の基本物性確立に取り掛かる。特に、電気化学特性の評価後、必要に電子アクセプター性を向上させるために電子求引性基の導入についても検討を視野に入れている。 基礎物性の確立後、水素結合形成部位を導入した電子ドナー性の分子の合成を行う。現時点においては代表的な電子ドナー性分子であるポルフィリンを候補として考えている。合成完了後、それぞれの分子を用いて水素結合形成能について評価を行う。そして分子集合体の構築ならびに光誘起電子移動特性について詳細に評価を行うことを計画している。
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