2013 Fiscal Year Annual Research Report
局所ラングランズ対応とLubin-Tate perfectoid空間
Project/Area Number |
25887009
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
津嶋 貴弘 東京大学, 数理(科)学研究科(研究院), 助教 (70583912)
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Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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Keywords | Lubin-Tate perfectoid空間 / 局所ラングランズ対応の幾何実現 |
Research Abstract |
数論における主テーマの一つであるLanglnds対応を幾何学的な手法で理解することが研究目的である。より具体的には、Lubin-Tate 空間(以下、LT 空間)の局所的な幾何学的性質とそのエタール・コホモロジーを研究することで Langlands 対応の幾何的実現を理解することが主目的である。そのためには、これらの空間の悪い還元(bad reduction)を調べる必要がある。この問題にアプローチする上では、LT空間の幾何を研究するよりも、Scholze-Weinsteinの導入したLubin-Tate perfectoid空間(以下、LTp空間と略記)を用いたほうが、Hecke作用も完全に理解できるし、還元の様子を調べることも易しい。本研究ではこの空間を解析することにより、導手が最小であるepipelagic表現の幾何的実現を証明することを目標として研究を行ってきた。これまでの研究で基礎体の剰余標数が一般線形群のサイズを割っていない場合(tame case)にはこのクラスの表現に対する局所Langlands対応(LLC)と局所Jacquet-Langlands対応(LJLC)の幾何的実現を完全に証明できた。具体的には、LTp空間の中にaffinoidの族を具体的に定義し、その還元とそこへの群作用の決定、更に中間コホモロジーの解析を行った。(Step 1) そのコホモロジーに実現されている表現の対応が実際にLLCとLJLCと一致することを示した。(Step 2) Step 2ではBushnell-HenniartのLLCを明示的に理解する一連の研究の一部と比較することで証明が成された。 一方でtameでない場合にもStep 1までは研究を行った。この場合にはガロワ表現が難しいが、これの研究を行ってきた。これらの研究は今井直毅氏との共同研究である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、epipelagic表現に対するLLCとLJLCの幾何的実現を目標としている。この目標を達成するためにはtame caseとwild caseの二つの場合を取り扱う必要がある。この二つの場合では生じる現象が大きく異なる。これまでの研究ではtame caseに対する上記の目標は完全に達成できた。一方、wild caseにおける上記の目標達成はかなり困難であると考えていたが、これについても非常に順調とは言えないものの進展はしてきたと考えている。 乗り越えるべき問題点は以下のものである。1. affinoidの族の還元とそこへの群作用の解析 2. 中間コホモロジーの理解とそこに出来る表現の対応の明示的な理解 3. 2で達成した表現の対応とLLC、LJLCとの比較 これまでの研究で、wild caseでも1,2は完成した。3の達成のためには中間次元のエタールコホモロジーに現れるガロワ表現を明示的に理解する必要がある。これは現段階では完全なものになっていない。有限体上のある多様体のコホモロジーへのフロベニウス固有値についてかなり詳しく理解する必要があり、この問題点はまだ完全に乗り越えられていない。またtame caseではLLC, LJLCがBushnell-Henniartの研究で明示的に理解されているため、3は比較的容易であったのに対して、wild caseではそれに対応することが完全に理解されていない、という問題点がある。Bushnell-Henniartの研究により不分岐捻りの曖昧性を除けば理解されている。これを使って不分岐捻りの曖昧性を除いては3の目標は達成出来た。この曖昧性は上記のフロベニウス固有値決定の問題と関係している。この問題に対する方策を立てる研究をこれまで行ってきており、完成はされていないもののかなり解決に近づいてきたということが上記区分の理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
「理由」でも述べたが、今後研究を推進するためには、ある有限体上の多様体のコホモロジーへのフロベニウス固有値をある程度明示的に理解する必要がある。ところで、この多様体はある意味でのレベルを持っており、レベルが低い場合には、ある種のガウス和を計算することでフロベニウス固有値が決定出来る。そこで、レベルが低い場合に問題を帰着させる、という方策を考えている。ここまで帰着出来ると以下の方策に沿って「理由」で述べた目標の3が達成できると考えている。まず、 中間コホモロジーに現れるガロワ表現を表現のGrothendieck群の中で指標のinductionの差の形で書く。次に、その指標のイプシロン因子を上記のフロベニウス固有値の理解を用いて計算する。対応すると期待されるcuspidal表現のイプシロン因子は決定出来るのでそれと比較して3のLLCに関することが証明出来る。wildの場合には、LJLCの明示的な理解は知られていないので本研究で構成した対応をLJLCと比較することが今後の課題である。以上では、epipelagic表現に焦点を絞って具体的な方策を述べてきたが、LTp曲線の剰余標数が2の場合の安定還元決定も大きな目標の一つであり、以下ではそれについての研究計画と方策について述べたい。剰余標数が2の場合には、安定還元の既約成分としてどのような曲線があらわれるか、超楕円曲線以外全く知られていないのが現状である。本研究ではこれ以外の還元を持つaffinoidの構成も並行して行っている。これまでの研究で新しいaffinoidの族を発見したので、それのコホモロジーを今後詳しく解析していき、そこに実現された表現の対応についての理解を深めていくことも目標として研究を行う。これらの途中結果に基づいて組織的に安定還元の全体像を予想する研究も行う。そのための方策としてCM点の取り扱いに習熟していく。
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