2013 Fiscal Year Annual Research Report
生物集団の年齢構造と空間伝播に着目した非線形反応拡散方程式の解析
Project/Area Number |
25887011
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
國谷 紀良 東京大学, 数理(科)学研究科(研究院), その他 (60713013)
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Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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Keywords | 感染症モデル / 年齢構造 / 空間構造 / 基本再生産数 / 微分方程式 / 積分方程式 / 力学系 / リャプノフ安定性 |
Research Abstract |
平成25年度は生物集団の数理モデルとして、特に感染症の流行動態を表す微分方程式系を構築し、その解析を行った。年齢構造を含む数理モデルとしては、季節性インフルエンザや媒介生物感染症などの季節毎の感染症の再帰的な流行をモデル化する上で有用となる、時間周期的な係数を持つSIR感染症モデルを構築し、その解析を行った。結果として、次世代作用素のスペクトル半径として導出される基本再生産数 Ro が、感染症の持続的な流行を意味するエンデミックな周期解の存在を左右する閾値となること、すなわち Ro > 1 であればそのような周期解が存在するが、Ro < 1 では存在しないことを示した。その結果は、近年、周期系のモデルに対する一般的な定義の与えられた基本再生産数Roが、感染症の流行規模を予測する上で有用な指標値となり得ることを数学的に厳密な立場から保証するものである。 また、各個体の空間伝播を考慮に入れた感染症モデルとして、平成25年度では区分的な各集団(パッチ)間を移動する個体の挙動を考慮に入れた多集団SIS感染症モデルの研究を行った。そこでは上述のモデルと同様に、感染症の流行規模を予測する上での指標としての基本再生産数 Ro に着目した研究を行ったが、特にこのモデルの場合、Ro > 1 であれば感染症が定着する状況を意味するエンデミックな平衡解が大域的に漸近安定となり、Ro < 1 であれば感染症が駆逐される状況を意味する自明平衡解が大域的に漸近安定となることが示された。この結果は、感染症の将来的な流行挙動を決定付ける意味で、基本再生産数Roが大きな役割を担うことを改めて示すものである。その他、共同研究として、マラリアやコンピュータ・ウイルスを対象とした数理モデルの解析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
年齢構造や空間構造を持つ複数の感染症モデルを構築し、それらに対する数学的に厳密な解析結果を得ることに成功したため。特に、時間周期的なモデルや多状態モデルに対し、今後の研究に適用可能となることが期待される解析手法を構成することに成功したため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は特に、連続的な空間構造を持つようにモデルを一般化し、それらに対して、平成25年度までに得られた解析結果を拡張することが可能かという観点から研究を進めたい。特に従来の個別のモデルに対して得られた結果を基にして、それらを包括する形でのより一般的な解析理論の構成を目指し、研究を進めたい。
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Research Products
(12 results)