2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25887024
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
藤井 友香 東京工業大学, 地球生命研究所, WPI研究員 (20713944)
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Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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Keywords | 惑星地質 / 系外惑星 / 国際研究者交流(アメリカ) |
Research Abstract |
視線速度法やトランジット法により1000を超える系外惑星が検出されてきており、地球と同程度の大きさのものもも見つかっている。しかし、現在までに推定できているのは大きさと軌道の情報のみであり、将来的には、惑星光を直接検出して惑星の表層環境の詳細を調べることが期待されている。遠方にあり点源としてしか観測できない系外惑星のスペクトルやその時間変化を正しく解釈するには、現実的且つ多様な表層環境が惑星光に及ぼす影響を調べておく必要がある。 このため、実際の姿を知ることができる唯一のサンプルとして太陽系内固体惑星・衛星の地質を見直し、各天体の地質学的特徴と、遠方からの測光観測で得られる情報の対応関係を明らかにした。具体的には、宇宙探査機によって得られた表面の部分毎の反射特性にもとづいて、点源としての反射光の波長依存性、時間依存性をシミュレーションし、大気の薄い太陽系内固体惑星・衛星の反射光が自転に伴って5-50%の変動を示すこと、この変動が火成活動・ダスト分布・外から降る物質の影響などのさまざまな地質学的特徴に起因していること、 また、変動振幅の大きさとその波長依存性は地質学的起因を探る上で示唆的であること、などが分かった。 また、太陽系内には大小さまざまな衛星が見られるが、系外惑星観測では衛星は惑星と分離して観測できないため、衛星光の混入は惑星光の解釈を間違わせる可能性がある。特に、土星の衛星タイタンのような(メタンに豊富な)大気を纏う衛星の存在を考えると、重要なバイオマーカーの1つとして長年考えられてきた非平衡の大気の兆候が、実際には非平衡の大気でなく、共に非平衡でない(生命のいない)惑星と衛星の混ざったものである可能性がある。この可能性を、惑星のみのスペクトルと惑星+衛星のスペクトルをシミュレーションによって検討し、モデルの縮退と非平衡大気と判断するための基準を議論した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定のうち、太陽系内固体惑星・衛星のサーベイについては大方完了することができた。 年度の前半では、惑星表面の各部分の反射特性のデータや論文、太陽系内惑星の観測データが掲載された過去の文献を収集するとともに、火星、月、水星、ガリレオ衛星の各天体を専門とする研究者らと議論し、地質学上の特徴とその成因について理解を深めることができた。年度の後半は、主に論文の執筆、学会発表に費やした。12月にはNASA Goddard Space Flight Centerにセミナーに趣き、太陽系内惑星研究者の方々から有用な示唆をいただくことができた。 また、そこから派生した話題(衛星によるバイオマーカーのfalse positive)についてもまとめることができた。こちらは、プリンストン高等研究所の滞在によって可能になった成果である。 一方、計画していたが実行されなかった課題もあった。これは、重要性の再検討や、計画の順序の変更のためである。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は2つの柱を考えている。ひとつは、太陽系内惑星を越えた固体惑星のさらなる多様性の開拓、特に、地球の数倍~10倍程度のsuper Earthと呼ばれる惑星の表層環境をGCMを用いて検討することである。Super Earthは宇宙に数多く存在することが観測から分かっており、また将来のトランジット観測や直接撮像観測においてS/N比が(地球に比べて)大きいため、良い観測対象になると考えられているため、将来観測との整合性が高い。これについては、米国NASA GISS (Goddard Space Flight Center) のGCMを使わせていただくことや今後も継続的に議論していくことが決まっており、国際的に協力しながら研究を進めていきたい。 もうひとつは、逆問題的な立場から、スペクトルからの大気組成やプロファイル推定の妥当性を系統的に調べることである。惑星スペクトルの観測は、すでに(トランジット系の)ホット・ジュピターについては得られており、逆問題理論モデルのフィッティングによるさまざまな大気パラメータ値の推定が行われているが、逆問題理論モデルの依存性や、各分子の散乱吸収パラメータの誤差など、さまざまな不確定性が伴う。実際に、いくつかのスペクトルの解釈が不整合であるものもある。また、実際の惑星表面は3次元に広がっているのに対し、観測ではその平均的なスペクトルしか得られないという制約からくる誤差もある。惑星光の逆問題に伴うこれらの不確定性を整理し、推定値の妥当性を調べる。この点については、プリンストン高等研究所の研究員と議論を始めている。
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Research Products
(5 results)