2013 Fiscal Year Annual Research Report
宇宙マイクロ波背景輻射の弱い重力レンズ測定から探る宇宙論
Project/Area Number |
25887033
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
並河 俊弥 京都大学, 基礎物理学研究所, 研究員 (80708511)
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Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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Keywords | 弱い重力レンズ / 宇宙マイクロ波背景輻射 |
Research Abstract |
本研究では、宇宙マイクロ波背景輻射(CMB)の弱い重力レンズ効果を用いた宇宙論への応用に着目する。CMBの弱い重力レンズ効果の観測は、近年急速に進展しており、今後の偏光観測では重力レンズ効果の推定精度が飛躍的に向上し、種々の宇宙論的課題への応用が期待される。これらを踏まえ、初年度は以下の研究を行った。 1)我々は、24年度にCMBの温度揺らぎに対して開発した手法を偏光データに応用した。重力レンズの推定では、測定した揺らぎに適当な重み関数を掛けて推定する。このさい、重み関数を適切に選ぶことで、重力レンズ以外の系統誤差を効率よく取り除くことを温度揺らぎの場合に指摘していたが、それを偏光揺らぎからの重力レンズ推定にも有効であることを、数値シミュレーションを用いて示した。 2)宇宙初期に生成される原始重力波の測定は、初期宇宙の姿を知る上で重要な課題となっている。この原始重力波は宇宙マイクロ波背景輻射(CMB)の偏光度分布に渦状のパターン(Bモード)を生成するため、CMBのBモード観測を通じた原始重力波の測定が多数実行・計画されている。一方で、今後さらにBモード偏光観測を通じて初期宇宙の情報を取り出す上で、重力レンズ効果によって生じるBモード偏光の除去も重要となりつつある。Bモード偏光に刻まれる原始重力波の信号は小角度スケールにおいて重力レンズ由来のBモード偏光に埋もれてしまうためである。我々はまず、地上実験において大角度スケールでノイズが卓越した状況でも重力レンズの無バイアスな推定は可能であることを示した。さらにこれを踏まえたうえで、重力レンズBモード除去による原始重力波の測定可能性、除去アルゴリズムの問題点とその克服方法について調べた。この成果は現在論文としてまとめている段階である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の研究計画では、「研究実績の概要」に述べている1)を達成することを第一目標としていた。また2)に関しては、可能であれば研究を進める予定であった。すでに1)の成果は論文として公表されており、また2)の成果に関しては研究会において公表しており、現在論文化している段階である。このため、当初の計画どおり順調に進んでいると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
ここまで研究は計画通り順調に進んでおり、当初の計画どおり、今後は重力レンズ場の高次統計が宇宙論に有効かどうか調べる。
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